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高槻中学校・高等学校

進学教室浜学園が独自の切り口で中学校を取材し、その魅力をお伝えしていきます。

平成29年度より共学化し、次世代リーダーの育成に力をいれる高槻中学校・高等学校。学校法人大阪医科薬科大学の併設校として医療や健康をテーマに多様な学びを展開しています。 施設面も一新され、オックスフォード調の図書館も完成。今回はそんな高槻中学校・高等学校について取材しました。
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学校法人大阪医科薬科大学 高槻中学校・高等学校 校長 工藤 剛先生と浜学園経営企画室渉外担当 山田

7つの理科室と新図書館を新設

―本日伺ったところ、たいへん綺麗な校舎に建て替えておられましたね。施設面についてお話を伺ってもよろしいでしょうか。
学校の体制も変わり、建学の精神を具現化していくにあたって、設備面も変えていかなければならないという話になりました。「志を育む空間」をコンセプトとしたキャンパス整備が進行中で、現在は第3期まで進んでおり、ほとんどの施設が新しくなっています。
SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)指定校として特長的な施設は、7つの理科教室を擁(よう)する新校舎です。生物2教室、化学2教室、物理2教室、地学1教室を備え、サイエンス教室を充実させていくという方針を体現した校舎です。
同じくSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)指定校としては、新図書館が必見です。名門オックスフォード大学の図書館をイメージコンセプトにデザインした伝統的な趣を感じさせる図書館で、2階のリーディングテラスでは中庭を眺めながら思索に耽(ふけ)ることができます。中学校・高等学校では、規模・デザインともに他にはなかなかない施設だと思います。 学び舎という場を改めて考えたとき、キーになるものはやはり図書館だろうと。そこで図書館を中心とした、新たな学習スタイルを作ることを計画したのです。コンセプトは「アカデミックフォレスト(学びの森)」で、森へ分け入るようにして知の探究をする場という印象です。
現在はデジタル化の時代で、インターネットでも本を読むことはできます。けれども、電子化された本は匂いも感触もなく、無機質な印象です。人間はアナログな生き物ですから、実際の本にたくさん触れながら学びの本質を体感してもらうことが大事ではないかと思いました。 所蔵されている本はバリエーション豊かです。たとえば、オックスフォード大学出版局によるVery Short Introductions (VSI) シリーズはほぼすべて(567冊)取り揃えました。歴史、政治、経済、宗教、哲学、科学、芸術、文化など、様々な分野をコンパクトな構成でカバーしており、英語力だけでなく教養も身につけられる良書群です。一方で、マンガ『PEANUTS(スヌーピーが有名)』なども置いています。
図書館の1階はアクティブラーニングコモンズになっており、机や椅子を自由に並べ替えることができます。調べたことを整理したり、友達と意見交換をしたりする場という位置付けです。1階の中央部はアクティブラーニングスタジオになっており、探究活動の発表をすることができます。
2020年にはすべての施設が完成しますので、ぜひ足を運んでいただければと思います。

大学生の勉強を体験できる各講座

―大阪医科大学、大阪薬科大学との連携についてお伺いできますか。
ご存知のとおり高槻中学校・高等学校は、学校法人大阪医科薬科大学のもとに設立されている学校です。文科省は高大連携を重視していますが、本校に関していえばそれが達成されやすい環境だといえるでしょう。特に、医療系の進路を考えている生徒には多くの利点があります。
具体的には高校1年では「基礎医学講座」を選択することができます。これは放課後に医科大学に行って一回90分の8つの講義(生理学、公衆衛生学、法医学、生化学、薬理学、解剖学、病理学、微生物学)を医大の教授から受けるもので、実際の医学部生がどのような勉強をしているのか、現場の医師がどのような思いで医療に当たっておられるのかを知ることができます。
この講座を修了すると、学長名で発行される修了証書が授与されます。この修了証書を持たない生徒には原則として医学部への推薦状は出しません。というのも、医師になるからには「人のためになる医師」を目指して職に就いてほしいと考えるからです。単に偏差値の高低で医学部を目指すのでは、患者さんにとって良い医師とは言えません。高校生のレベルでいいので、医師という職業がどのようなものなのか理解してから進学してほしいのです。
ここまで濃密な学びが展開できるのは、やはり医科大学との密接な高大連携があるからこそでしょう。今年からは大阪薬科大学との「基礎薬学講座」も始まりました。引率の教員すらも「勉強になった」と感じるようです。

医学研究科の留学生が英語で講演

―他大学との接続に関してはいかがでしょうか。
大阪医科大学・大阪薬科大学以外にも、京阪神のいろいろな大学と連携しています。たとえば大阪工業大学にはロボットの制作でお世話になっていますし、京都大学とはグローバルヘルス(世界の健康問題)に関する課題研究指導の一環として医学研究科の留学生を招いて、すべて英語で講演していただいています。
彼らはタイ、アフガニスタン、イエメン、コンゴ、ケニア、スーダン、スワジランド、中国…からPh.D.(博士号)取得を目指して留学中の研究者ですが、「国を背負っている」という意識が強く、学びに対する姿勢が違う。生徒はそれぞれの国の課題を知るだけでなく、学び方に関しても大きな刺激を受けることができます。
語学に関しても、アメリカ英語・イギリス英語だけでなく様々な国の英語を聞く機会になります。現在、日本の英語教育はアメリカ英語が中心ですが、リンガフランカ(国際共通語)としての英語に触れられるわけです。
講演の際には中3、高1、高2の3学年の生徒が一緒に同じ講堂で聞くことになります。高校2年生が英語でぱぱっと質問できる一方、中3生は十分に聞き取ることができず、力不足を感じることがある。「高2ってすごいな」と思わせる効果があります。異学年がいることによって化学反応が起こるのです。

「英語で学ぶ」姿勢を重視したプログラム

―語学の話が出ましたので、海外留学などのプログラムについてお伺いできますか。
本校では「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」姿勢を重視しており、「英語を使って新たな情報を得る」、「誰かに何かを伝える」ための仕掛けを用意しています。
まずは高校生対象のスタンフォード大学のオンライン講座からご紹介します。これはスタンフォード大学と本校が共同で開発したグローバルヘルスに関する8回の英語での講義です。インターネットでアメリカ西海岸とライブで結び、講師への質問も行います。事前・事後のレポート課題もあり、一定以上の成績を収めると、スタンフォード大学と高槻高校の両校のロゴが入った修了証が授与されます。
次に、国立台湾大学での課題研究発表。GAコースでは高1の3学期に台湾で、現地の高校生の前でプレゼンテーションを行います。最もスコアの良かった3グループは、最終日の朝に国立台湾大学の教授陣の前で発表することができます。ちなみに発表はもちろん英語です。 生徒がデング熱の発表をした際には、感染症のプロフェッショナルの教授が来てくださいました。国を越えた高大連携と言えるでしょう。
それから、世界のトップクラスの大学生との交流。これは次世代リーダー養成プログラムという位置付けで、トップクラスの大学生のマインドを間近で体験するのが目的です。今持っている自分の能力をぶつけた上で「まだまだ自分は足りないな」と気づいてもらおうというわけです。中学生はボストンでホームステイをし、米国ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)を訪問します。高校生は英国ケンブリッジ大学のホーマートンカレッジに滞在します。そのほか、中3でのターム留学なども用意しています。

ボーダーレス化・グローバル化に対応したリーダー

―御校のイメージされる「次世代リーダー」とはどのような存在でしょうか。
現在のスクールミッションは2012年の5月に策定した「Developing Future Leaders With A Global Mindset(卓越した語学力と国際的な視野を持って世界を舞台に活躍できる次世代リーダーの育成)」です。
本校の起こりは1940年の旧制中学校に始まりますが、当時は戦前だったため建学の精神も「お国のためになる人材を育てる」こととされました。しかし、世界は徐々にボーダーレス化・グローバル化しています。そのため建学の精神の軸は保ったまま、より現代に合ったものをつくることが必要だと考えました。そこで「国のため」から「地球(Globe)のため」と改めたのです。
これからの時代、「わが国だけが良ければいい」という価値観では持続不可能だと思うのです。我々は皆、「地球」という同じ船に乗っているんだという意識を持つリーダーを育てていかなければならない。口で言うほど簡単なことではありませんが、SSHやSGHといった文科省のカリキュラム開発も利用しながら、本校独自のプログラム・環境を整えてたくさんの本物に触れさせたいと考えています。

時間をかけて学ぶことが大切

―2020年の教育改革が迫ってまいりましたが、次世代の学力に関してはどうお考えでしょうか。
時代が変化していく一方で、学び方はずっと変わってこなかったように思います。新たな大学入試は、従来の方法では測れなかった能力を測るためのものです。本校もその考え方に賛成しており、新たな時代のリーダーを育成するには学校での学び方を変えていくことが必要だと考えます。
これまでの学びの中心は、より正確にたくさん暗記することであり、試験ではそれを吐き出させることに主眼が置かれてきました。しかし、記憶では人間はコンピュータにかないません。これからは意識的にあえて回り道をしながら学んでいく必要があると思うのです。知識をただ持っているだけでは「大きな子ども」がたくさん生まれるだけです。世界大学ランキングを見ても日本の大学の評価はきびしい位置にあります。
人間どういうときに一回り成長できるか、と考えてみると、苦労したとき、しんどかったとき、挫折したときではないでしょうか。本校では課題研究がその一例だと考えています。時間はかかるし思うようにいかないことも多々あるけれども、得られるものは大きい。失敗してもいいから、時間をかけて学ぶ。それが次世代の学力を育むのです。

医科薬科大を生かした課題研究

―SSH、SGHの取り組みについてお伺いできますか。
SSH、SGHの中心となるのは課題研究です。これも大阪医科大学・大阪薬科大学のバックボーンを最大限に生かし、学びを展開しています。
SSH事業のテーマは「生命科学系の次世代リーダーの育成」。一方でSGH事業のテーマは「グローバルヘルス」です。一見、理系に寄ったテーマではありますが、政治や経済に課題があると国民の健康問題をケアする体制を整えることはできません。そのため、法学部や経済学部など、文系の進路をとる生徒であっても深い学びを得る機会になります。こうしたテーマを扱えるのは高槻だからこそでしょう。
これまでの目立った活動としては、『Global Health 101』という専門書の翻訳チームに本校の生徒が加わったことが挙げられます。もともとはエール大学医学部の先生が作られた教科書で、京都大学医学部の先生・学生さんたちが翻訳することになり「高槻高校の生徒さんも入りませんか」とお誘いをいただきました。校内で有志を募ったところ、高校2年の3人が手を挙げましたので、第14章「Unintentional Injuries(不慮の傷害)」の翻訳を担当させていただきました。不慮の傷害とは「ビンにジュースが入っていると思い、子どもが廃油を飲んで中毒をおこしてしまった」などのケースで、発展途上国で大きな問題となっています。教員と協力しながら完成させ、翻訳者として掲載していただきました。

現地の高校生・政策に携わる方々にインタビュー

―(壁のスケジュールを見ながら)先生のカレンダーには「パラオ訪問」と書かれていますが、どのような取り組みをされているのでしょうか。
本校はSGH事業として、過去3回、パラオ共和国のコロール市・バベルダオブ島・ペリリュー島にてフィールドワークを行ってきました。スタート時は大阪大学のグローバルコラボレーションセンターにご協力をいただき、また現地の方々にも温かく迎えていただけたことで、大変実りある活動となっています。
このプログラムでは現地の高校生との交流だけでなく、パラオ政府の保健大臣、国務大臣、教育省の高官、日本大使館、現地のNPO、NGOの人など、さまざまな方々から生徒が英語でインタビューを行います。実際に国の政策に携わっている方々に直接会って話を聞くことは、大変に貴重な経験になります。

現地から得られるグローバル教育・複眼的思考

―パラオといえば、太平洋戦争で激戦があった土地ですね。現地はどのようになっているのでしょうか。
パラオでの戦闘、特に「ペリリューの戦い」が行われたペリリュー島では現地に深い爪痕を残しただけではなく、日本軍の兵士の遺骨もまだ3,000柱ほど残されています。戦車や戦闘機の残骸もそのままで、洞窟の中には鉄かぶとやビール瓶もたくさん残されています。
島には戦争博物館がありますが、かつての日本軍が武器を格納していた建物を再利用したもので、アメリカ軍からの激しい攻撃でコンクリートが崩れて鉄筋がむき出しになった部分もそのままの、実に生々しい建物です。
私はそこで初めて千人針の実物を見ました。ひと縫いひと縫いにどのような思いが込められているのか、どのような経緯を経て現在の日本があるのか。一流の大学で学ぶのも大切ですが、こうしたところから考えるのも同様に大切なことです。それこそが本物のグローバル教育、複眼的思考ではないでしょうか。

―どうもありがとうございました。

取材日:2018年9月7日
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