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東大寺学園中学校・高等学校

進学教室浜学園が独自の切り口で中学校を取材し、その魅力をお伝えしていきます。

小鳥のさえずりが聞こえるほど、静かな雑木林に囲まれた場所にある東大寺学園中学校・高等学校。そこでは1,200名ほどの生徒が日々勉学やクラブ活動に励んでいます。「自由」な校風で知られる学校でもありますが、実際にはどのような「自由」が生徒に与えられていて、どのような思いを持って教育活動がなされているのでしょうか。今回はそんな東大寺学園中学校・高等学校の清水先生にお話を伺いました。
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東大寺学園中学校・高等学校 教頭 清水優先生と浜学園経営企画室渉外担当 山田

自分で考え、行動し、社会人としての基本を培う

―本日はよろしくお願いいたします。東大寺学園の校風を語るときに、多くの方が「自由」という表現をされると思うのですが、実際御校における「自由」の意味はどういうものだと言えるでしょうか。
受験生である小学生は、「自由」というと「制服がない」「校則がない」など、表面的なものだけを思い浮かべがちです。しかし、本校の意味する「自由」とは、理不尽・不合理なもので生徒を縛らないこと、大人や権威に対してひたすら従順であることを、生徒に求めはしないということです。反抗することを勧めているわけではありません。先生から言われたことに何でもかんでも素直に従うというような「良い子」でい続ける必要はないということです。自分で考え、自分で行動し、個性を伸ばし自主性を育むために、「自由」は不可欠だと考えるゆえの教育方針です。
自由と放任は別です。教員は、提出物を出さない生徒がいたら許さずどこまでも追いかけて行きますし、遅刻をすれば厳しく叱ります。生徒に自由な環境を与えつつ、学校生活に必要な最低限のことについて指導するのは当然です。
何事に関してもそうですが、生徒に自由にやらせると大抵は失敗します。そこで、失敗を未然に防ぐためにあらかじめレールを敷いて、安全に、しかも効率よく歩ませる、あるいは枠にはめるのが管理教育です。しかし、世の中は不測の事態の連続であり、用意されたレールの上を歩むだけでは通用しません。失敗から自分で学習し、修正し、自立していくことが求められる、それが世の中です。社会人となってからの基本的な姿勢を、中学高校の6年間の学園生活を通して、振り返れば小さな挫折やささやかな失敗を多く経験させながら育んで行きたいと願っているのです。

生徒主体のクラブ活動・投票で決める修学旅行先

―その「自由」は御校の学園生活のどのような場面に具体的に見られますか。
本校の「自由」がもっとも顕著に表れているのは、クラブ活動が盛んであるということです。興味・関心のあることには何でも挑戦してほしいと考えています。現在、運動部が11、文化部が17、同好会が11あります。陸上・ハンドボールは全国大会の常連、卓球・テニスも全国大会に出場しました。野球・サッカー・バドミントンも奈良市で優勝しています。文化部・同好会それぞれの活動内容も本当に多種多様です。一般の人から見るととりとめのないことかもしれませんが、多くの生徒が毎日いそしんでいます。ユニークな同好会としては、ロケット、和太鼓、観賞魚、暗号などです。同好会は、複数の学年にまたがる5人以上の生徒が集まり、顧問になってくれる先生を見つけてくれば同好会としての活動が認められます。文化部に所属する生徒の活躍も多岐に渡ります。テレビ番組に出演して有名になったクイズ研究、かるた甲子園で前年度優勝校を破り全国3位になった百人一首、ロボットコンテストの近畿大会で優勝して全国大会への出場権を獲得した電子工作、学園祭では小学生に大人気の鉄道研究、全国大会常連の囲碁将棋等々、教員主導ではなく生徒自身の主体的な活動によってめざましい成果をあげてくれています。

また、修学旅行の行き先を生徒が決めるのも本校の「自由」の大きな特徴です。中学2年時の研修旅行の行き先は教員が決定しますが、高校2年時の修学旅行の行き先は、高校1年時での生徒の投票によって決まります。学習指導や生徒指導と同じく、学年の進行とともに自由度が増し、教員による手綱が徐々に緩められていることの象徴です。生徒が選ぶ行き先は、「他校とは違う場所に!」とか「同じ部活の先輩とは違うところへ!」という思いゆえか、なかなか個性的です。来年度の修学旅行の行き先もこの夏に決まったのですが、北海道、ベトナム、台湾が最終候補地として残り、最終投票をする前に、それぞれの行き先を推す生徒が、その場所の魅力や現地でできる活動についてのプレゼンテーションを行った結果、最も多くの票を得たベトナムに決まりました。かつてはバルト三国のうちの2か国を訪問した学年や、東京から船で26時間かけて小笠原諸島を訪れた学年もありました。

「進度」よりも「深度」を重視

―授業で大切にされていることは何ですか?また、その具体的実例がございましたらお聞かせください。
本校の授業において大切にしているのは、「『進度』よりも『深度』を重視する」ということです。中高一貫の私学ですから、学年を先取りして学習を進め、高校の後半では大学入試に特化した演習に時間を割く、といったイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、本校では大学入試に特化した授業だけをしているわけではありません。大学入試は確かに人生の大切な節目ではありますが、人生の目的ではありません。好奇心旺盛な少年たちの知的好奇心を満足させられるような『深度』を重視する授業によって、大学で学ぶような内容に踏み込むこともあります。いわば、「学問の扉を少し開いてやる」ことによって、生徒の興味関心をくすぐっていきたいと考えているのです。
例えば、実験をふんだんに取り入れた理科の授業。厳しい中学校受験を乗り越えてきた生徒たちは、「理科の勉強=テストで1点でも多くとること」と思っている節があります。しかし、理科の本当のおもしろさは、テストで高得点を獲得することではありません。生物という学問のおもしろさは、生き物に触れることが原点です。ブタの眼球やイカの解剖、遺伝子組み換えなどの実験を通して、生徒は生き物の仕組みを主体的に学ぶのです。単なる大学入試への対策なら、高得点を取るために過去問を何度も繰り返す方が圧倒的に効率が良いはずです。しかし、中学生という時期から実験を多く取り入れた授業を展開することで、生徒はより深く学ぶことができるのです。
また、国語の文法を学ぶ授業では、基本事項を知識として覚え込ませることにとどまらず、日本語を一つの言語として客観的に捉えられるような授業を行っています。例えば、1班や3班における「班」の読み方は「パン」なのに、2班や5班における「班」は「パン」とは読まず、「ハン」になる。大阪では「日本橋」を「にっぽんばし」と読みますが、東京では「にほんばし」と読む。これらの違いが生じるのはなぜか。その理由を音声の側面から考えるというように、音声学の一端をのぞき見るような授業です。また、漢詩を学習する際は、私の場合、中国語での朗読を披露し、生徒に何度か声を合わせて発音させ、その後に「何か気づいたことは?」と問いかけてやる。すると、「各句末の響き方が一緒だ!」という声があがる。それを、押韻と呼ぶのだと、漢詩では重要な基本知識を伝授する、というような展開です。生徒がただ与えられた知識を覚えるのではなく、実際の体験を通して納得して覚えられるようにしているのです。しかしこのような授業は、たくさんの作品を読解するには効率が悪い。大学入試に出題される漢文で高得点を獲得するのに役立つかと言えばそんなに効果的ではないでしょう。しかし、そっぽを向く生徒はいません。みんな食らいついてくるのが本校の生徒の特長です。
さらに家庭科や芸術の授業も大切にしています。中学3年生ではボタン付けを行い、できなかった生徒には補習があります。高校1年生では家庭科の調理実習を行います。テストは包丁を用いて行うリンゴの皮むき。3分間で50cm以上むき切ったらA判定。また、最終学年である高校3年生においても音楽・美術・書道の芸術の授業を行っています。本校が、大学入試だけに力を入れている学校ではないことの証しです。

世の中の動きに流されず、今求められている力を育成する

―大学入試改革や、グローバル化への対応はどのようにされていますか。
世の中の動きに右往左往することなく、基本的にはすでに取り組んで来たことを継続すればよいのだとどっしり構えています。一方では、中学2年生・3年生にオンラインでの英語学習を実践するなど、新しい試みも取り入れています。
我々大人世代が受けてきた英語教育と、今の生徒が受けている英語教育には大きな差があると感じています。現代では外国の人と話す機会が非常に多く、英語をコミュニケーションツールとして使えることが求められるようになりました。その対策も本校では以前より行っていることです。本校にはネイティブの教員が単なる指導助手という立場ではなく、特別教諭として2名います。「英語四技能」が叫ばれる以前から、イギリス人とアメリカ人の教諭2人がメインとなり、中学校3年間クラスを半分に分けて英会話の授業を行ってきました。高校では日本人教諭とネイティブ教諭のチームティーチングで授業を進めています。
また、短期留学プログラムも、高校2年生の希望者約40名が、夏休みに12日間イギリスのオックスフォード大学で研修を行うというかたちで実施しています。単なる英語研修ではなく、世界各地からイギリスにやってきて、高い志を持ってオックスフォード大学で学ぶ大学生や大学院生と寝食を共にし、文学や哲学、経済や自然科学など、幅広く語り合い学んでいくこと、そして自分自身の将来を見据えながら帰国後の学園生活をより充実したものに高めるというのが目的です。そのような交流を実現するために英語は重要なコミュニケーションツールであるというように捉えています。現地での研修本番の1年前から数回に渡りネイティブスピーカーを学校に呼んで学習会を行っています。
大学入試がどのように変化しようとも、我々が生徒に身につけてほしい英語に関する能力は変わりません。新しい試みを取り入れつつ、永年培ってきた本校ならではの英語教育を今後も大切にして行きたいと考えています。

保護者・教員の思いを共有

―御校では、PTA活動が盛んだとお聞きしていますが、具体的にはどんな活動をされているのでしょうか。
本校は確かにPTA活動が非常に盛んです。その理由をお話しする前に、本校設立の経緯をお話しておきます。本校は、1926年に夜間に授業を行う中等学校として東大寺の境内に開校され、その後、1947年には、全日制の中学校が設立されました。実は、地域の保護者から、私立の全日制学校をつくってほしいという要望が大きくなって誕生したのです。
保護者との結びつきが非常に強い学校であるというのは、そのような設立時の経緯が今も脈々と息づいているということなのです。また、東大寺のお坊さんの協力をいただいて普段は見ることができないような施設の見学を行う見学行事や、東大寺の本坊を借りて、抽選で選ばれた120~130人の父親と20~30人ほどの教員が6月下旬の土曜の夕刻に飲食をしながら語り合う「父親を中心とする会」も開催されています。公的色彩の強い会議というのではなく、保護者と教員が距離を詰めてざっくばらんに話すことで、両者の思いを共有することができます。お寺ゆかりの行事が多いというのも本校のPTA活動の大きな特色で、学園が境内に設立されたという歴史を物語るものでしょう。遠足や懇親会が定例化され、また、コーラスや茶道などの同好会も熱心に活動しています。PTAの同窓会も奈良・京都・大阪と場所を変えながら毎年行われています。遠足、講演会、懇親会に加えて、俳句、書道、茶道、コーラス、ゴルフ、陶芸などの同好会活動も行われています。その様子はまるでカルチャーセンターのようです。現役の保護者、卒業生の保護者と交流し、教員と本音で語り合う機会を多く持つ家族的な雰囲気を大切にしていきたいと思っています。PTAの役員となった保護者は、はじめは負担に感じることもあるようですが、終わってみると「やってよかった!」といった気持ちになってくださるようです。
 12歳から18歳という多感な時期を過ごす生徒たちを、教員は原則6年間持ち上がりで指導することとしています。生徒と教員との結びつきは非常に強くなり、卒業後も変わらぬ交流が続きます。私は本校に勤めて19年目ですが、これでも浅い方で、もっと長く勤務している教員が多くいます。一人の教員が親子で担任をしたというケースもまれではありません。生徒・教師・親とが家族ぐるみで濃密な関係を築けるというのも、本校ならではの魅力であると考えています。


―どうもありがとうございました。
⇒東大寺学園中学校・高等学校HP 取材日:2019年11月8日
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