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二酸化炭素が水に溶ける要因と地球温暖化

執筆:北嶺中・高等学校 理科 青井大樹


二酸化炭素が地球温暖化の1つの要因となることは様々なところで耳にすることがあると思います。しかし、地球上の二酸化炭素のかなりの量が海水に溶けて存在しているということは、あまり聞いたことがないという人も多いと思います。今回はこの二酸化炭素が水溶けるということについて紹介します。

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二酸化炭素が水に溶けると、皆さんがよく知っている「炭酸水」になります。食塩やミョウバンが水に溶けることのできる量が水の温度によって変化するように、水に二酸化炭素が溶けることのできる量についても、大きく2つの要因で変化します。


1つめは、水の温度です。冷蔵庫でよく冷えた炭酸飲料にはたくさんの二酸化炭素が溶けていますが、水の温度が上昇すると、溶けることの出来る二酸化炭素の量は減少します。飲み残した炭酸ジュースを放置してぬるくなると、炭酸の強い刺激が減ってしまうのはこれが1つの要因です。また、炭酸ジュースをやかんに入れて沸騰させ、再び冷やしてから飲むとただの甘い水になります。温めたことで、溶けきれなくなった二酸化炭素が、空気中に逃げてしまったからです。したがって、地球が温暖化して海水温が上昇すると、海水が溶かすことのできる二酸化炭素の量が減ってしまうことになります。


2つめは、水と触れあっている二酸化炭素の濃度(正しくは圧力といいます)です。空気中の二酸化炭素の濃度が2倍になると水に溶けることの出来る二酸化炭素の量も2倍になります。これをヘンリーの法則といいます。これによると大気中の二酸化炭素の量が増えても、海水が吸収してくれる量が増えるので、その分だけ大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑えてくれそうです。


ところで、ある地域の海水の二酸化炭素の量を調べると、「1つめと2つめの要因によって、溶けることが出来る二酸化炭素の量」の数百倍もの二酸化炭素が溶けていた、ということがあるそうです。これは一体なぜでしょうか。


少し話はそれますが、やかんで水を温めることを考えます。やかんの底で温められた水は軽くなり、やかんの上方に向かいます。居場所を失ったやかんの上方の水は、やかんの底の方に向かって移動します。このように、重い水は沈み込み、軽い水は浮き上がるという性質があります。海水の濃度はどこでも常に一定というわけではなく、例えば川が流れ込む河口付近では、海水の濃度が周りよりも小さいということがあります。濃い海水は重く、うすい海水は軽い、という違いによっても同様のことが起こります。これにらよって海水は絶えず大きな流れによって、上下方向にもかき混ぜられ、世界全体の海水の流れをうみ出しています。これを海の「ベルトコンベア」と表現することもあります。この「ベルトコンベア」によって、二酸化炭素を多く含んだ海水が海底に移動したり、逆に海底の二酸化炭素を多く含んだ海水が、海の表面まで移動してきて、そこで二酸化炭素を放出したりします。その他にも、呼吸で二酸化炭素を放出する微生物が多い場所では溶けている二酸化炭素の量は、それ以外の場所より多いということもあります。


皆さんに伝えたいのは、地球の温暖化と二酸化炭素というテーマ1つで考えても、地球全体で考えるととても複雑な仕組みがあるということです。わかりやすい話は、誰にでも受け入れてもらいやすく、広まりやすいため、もしかすると「足りない」情報があるという事実を見落としてしまうことにつながりかねません。多くの人が信じているであろう、「二酸化炭素の大量放出は地球の温暖化につながる」ということでも、もしかしたら大きな原因は、私たちが見落としているところにあるのかもしれないのです。そんな、見落とされがちな事にもしっかり向き合っていけるような、科学の目を持った人たちが、将来の日本や世界をリードしてくれる事を期待しています。



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