子どもの悩み 親の寄り添い方
子どもは身体の成長につれて心理的にも発達し、様々な悩みを抱えるようになります。
特に中学年〜高学年になると、友達や学校の先生とのトラブルなど、大人でも解決しにくい悩みを抱えることも。そんなとき、親は悩んでいる子どもにどう対応してあげればよいのでしょうか。
今回は子どもがどんなことに悩んでいるのか、その悩みに対して親はどう接するべきなのかを見ていきましょう。
また小学生の悩みについて具体的に見てみると、最も多いのが「勉強や進学」、続いて「友達や仲間」「健康」「自分の性格」「お金」となっています。男女で悩みを比べてみると、1位は「勉強や進学」で共通していますが、2位以下を見ると男児が「健康」「自分の性格」「友達や仲間」となっていますが、女児は「友達や仲間」「自分の性格」「健康」という結果に。
男児と女児で悩みの順位にいくぶんかの差はありますが、悩みそのものにはそれほど大きな違いはないことがわかります。
この状況について「頼られるのは嬉しいけれど、どう答えてあげればいいのか……」と心配なお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。特に近年は子どもを取り巻く環境も大きく変わっています。お母さんご自身が子どもだった頃に経験していないことについて、よいアドバイスができないと悩まれるのも当然でしょう。
そこで今回は実際の悩みを例に、子どもにどう向き合うかを考えていきます。子どもの悩みをすべて取り上げるのは難しいのですが、代表的なものをご紹介していますのでぜひ参考にしてください。
[コラム]
小学生の悩みや心配なこと(上位5位)
小学生の悩みの相談相手
2013年の調査から、小学生の悩みの上位5位までを挙げました。勉強や進学に関する悩みが圧倒的に多く、続いて人間関係の悩み、健康の悩みとなっています。(※1)また悩みの相談相手は母親が最多で、同性の友達、父親と続きます。(※2)ちなみに中学生でも母親の割合は変わらず多いものの、女児は「同性の友達」に相談する割合がぐっと上がり、男児は「誰にも相談しない」が兄弟姉妹や教師などを上回っています。(※3)
母親 : 娘の話を聞いていると、ちょっと考え過ぎでは?と思える部分があります。私は小学生の頃、特定のグループに入らずいろいろな友達と遊んでいたので、特に気にしていませんでした。でも娘にはそれが悩み。どう答えてあげればいいでしょう?
母親 : 友達といつも楽しそうに笑っている印象だったので、悩みを打ち明けられてビックリしました。なぜ早く気づいてあげられなかったか、後悔する気持ちでいっぱいです。どうすれば仲間外れにならず、うまく今のポジションから逃れられるでしょうか。
母親 : うちの子はときどき忘れ物をするので、先生に「反省していない」と見なされたのかも。とはいえ少し厳しすぎると思うし、うちの子だけ反省文というのも納得できません。ただ娘の表現が大げさな恐れもあるので、先生に会って相談したいのですが、「モンスターペアレント」と思われるのも嫌です。
両親 : 心から励ましているつもりの言葉が負担になっていたなんて、とてもショックです……。でも「よかったね」だけではモチベーションが上がらないのではないかとも思います。
子どもの可能性や能力をできるだけ伸ばしてあげたいと思う気持ちが、息子さんの重荷になっているようですね。息子さんは「次は〇位以内を目指そう」のような励まし方がプレッシャーだと具体的に言っているのですから、最も大切なのはまずご両親が子どもを他人と比較する評価の仕方を変えていくことといえるでしょう。例えば息子さんの成績が少しでも上がったり、苦手な分野を克服できたりした時に、まず「前より成績アップしたね」「できることがまた1つ増えたね」と評価してあげるといいでしょう。さらに息子さんの成長を、次のテストや受験などの数か月単位から数年〜10年くらいのもっと長期的なスパンで評価してあげる視点を、親が取り入れていきましょう。子どもにとってそのような長い単位で物事を考えることはとても難しいですが、そういった考え方もあると親が子どもに教えるよいタイミングだと思います。モチベーションについても、息子さんの成長をしっかり認めてあげれば伝わるはずですよ。
母親 : 友達との関わり方が、相手が嫌がっているのにしつこく寄っていく、いつまでも話を切り上げずしゃべり続けるなど、自分勝手にふるまっているように感じます。このままでは、いじめの対象になるのではとヒヤヒヤします。
「話しかける前に、友達がその時に何をしているかよく見てみよう」と教えましょう。要は、話しかけたいという自分の気持ちだけに集中せず、相手が今どんな気持ちで、何をしたがっているのかを想像させることです。また「人が嫌がることは止めよう」などの抽象的な表現がわかりにくいようなら、相手が嫌がっているサイン(返事をしない、離れていく、背中を向けるなど)について、「こんな時は相手が嫌がっているんだよ」と具体的に伝えてみてください。人の気持ちについて想像させる、自分は良くても相手が嫌な場合もある(自分と他人は違う)ことを理解させてあげましょう。多くの人と触れ合い、様々な経験をすることで成長していけるはずですよ。
小学生の悩みについて事例を挙げましたが、子どもの相談に対して親が「正しい答えを返さなければ」と構える必要はありません。まず子どもの話に耳を傾けてあげてください。悩みを打ち明け、いわば「愚痴って」いるうちに子どもの気持ちが落ち着くケースも多々あります。悩みを共有し合い、一緒に考えるつもりでリラックスして話をしてあげましょう。
【出典】 (※1)平成25年度小学生・中学生の意識に関する調査報告書 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/junior/pdf/b2-1.pdfdf (※2)内閣府 非行原因に関する総合的研究調査(第3回) https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/pdf/2-2-5-2.pdf (※3)第13回 21世紀出生時縦断調査(平成13年出生児) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/13/dl/h13_kekka.pdf
特に中学年〜高学年になると、友達や学校の先生とのトラブルなど、大人でも解決しにくい悩みを抱えることも。そんなとき、親は悩んでいる子どもにどう対応してあげればよいのでしょうか。
今回は子どもがどんなことに悩んでいるのか、その悩みに対して親はどう接するべきなのかを見ていきましょう。
小学生は近年、どんなことに悩んでいる?
子どもは成長するにつれて親と自分だけの関わりから、友達や親以外の大人などと触れ合い、世界が広がり、それによって悩みの内容もより多様になります。実際に、小学生の悩みについて厚生労働省が行った調査(※1)では、小学生の2人に1人が悩みを抱えており、さらに中学生になると悩みを抱える子どもは7割以上になっていることがわかりました。また小学生の悩みについて具体的に見てみると、最も多いのが「勉強や進学」、続いて「友達や仲間」「健康」「自分の性格」「お金」となっています。男女で悩みを比べてみると、1位は「勉強や進学」で共通していますが、2位以下を見ると男児が「健康」「自分の性格」「友達や仲間」となっていますが、女児は「友達や仲間」「自分の性格」「健康」という結果に。
男児と女児で悩みの順位にいくぶんかの差はありますが、悩みそのものにはそれほど大きな違いはないことがわかります。
相談相手は主に母親調査でわかった信頼感
では、小学生は誰に悩みを相談しているのでしょうか。内閣府の調査(※2)によると、母親に相談する子どもが圧倒的に多いとわかりました。続いて同性の友達や父親、きょうだいとなっています。小学生の子どもにとって、おそらく最も身近な存在である母親への信頼感はかなり高いと思われます。この状況について「頼られるのは嬉しいけれど、どう答えてあげればいいのか……」と心配なお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。特に近年は子どもを取り巻く環境も大きく変わっています。お母さんご自身が子どもだった頃に経験していないことについて、よいアドバイスができないと悩まれるのも当然でしょう。
そこで今回は実際の悩みを例に、子どもにどう向き合うかを考えていきます。子どもの悩みをすべて取り上げるのは難しいのですが、代表的なものをご紹介していますのでぜひ参考にしてください。
[コラム]
小学生の悩みや心配なこと(上位5位)
小学生の悩みの相談相手
2013年の調査から、小学生の悩みの上位5位までを挙げました。勉強や進学に関する悩みが圧倒的に多く、続いて人間関係の悩み、健康の悩みとなっています。(※1)また悩みの相談相手は母親が最多で、同性の友達、父親と続きます。(※2)ちなみに中学生でも母親の割合は変わらず多いものの、女児は「同性の友達」に相談する割合がぐっと上がり、男児は「誰にも相談しない」が兄弟姉妹や教師などを上回っています。(※3)
子どもの悩み、親はどうしてあげればいい?事例で見る悩みへの寄り添い方
子どもに悩みを打ち明けられて、どう答えればいいのか戸惑う保護者も多いのでは? ここでは子どもの悩みと親の本音、それらに対するドクターのアドバイスを紹介。身近な事例ばかりですので、ぜひお子さまの悩みに寄り添うために活用してください。友達との悩み「いつも一緒にいるグループの中で、私だけが浮いている」(小4・女子)
子ども : いつも一緒のグループの中で、私だけ他の子からあまり誘われないし、皆の話を聞いて、皆に合わせて笑っているだけという感じ。私だけ浮いているようでしんどい。母親 : 娘の話を聞いていると、ちょっと考え過ぎでは?と思える部分があります。私は小学生の頃、特定のグループに入らずいろいろな友達と遊んでいたので、特に気にしていませんでした。でも娘にはそれが悩み。どう答えてあげればいいでしょう?
Doctor´s Comment
悩みを受け止め、自身のエピソードを話してあげましょう 「娘さんの考え過ぎでは?」という印象をお持ちのようですが、まずは娘さんの話に耳を傾けて「あなたはそう思うんだね」と受け止めてあげてください。大人から見ればささいに思えることでも、「気にし過ぎ」などと簡単にジャッジしてしまうと、娘さんが悩みを打ち明けにくくなり、自分だけで抱え込んでしまう恐れがあります。お母さんも小学生の頃、同じような経験があったなら「実はお母さんも昔、同じようなことがあったけど、いろんな友達と遊んでいたから寂しくなかったよ。嫌じゃなければ、いろんな人と仲良くしてみたら?」と、エピソードを交えて話してあげてはどうでしょう。それでも娘さんが気にする場合は、「友達に必ず合わせなければいけないことはないのよ」「たまには1人で過ごす時間があってもいいんじゃないかな」などと伝えてあげてもよいでしょう。友達との悩み「友達グループで“いじられキャラ”になっていてつらい」(小5・男子)
子ども : いじめほどではないけど、友達が僕の失敗をずっとからかってきたり、「〇〇くんには無理だよ〜」とバカにしたり、ちょっと下に見られるポジションになってしまった。最初は一緒に笑っていたけどイヤになってきた。母親 : 友達といつも楽しそうに笑っている印象だったので、悩みを打ち明けられてビックリしました。なぜ早く気づいてあげられなかったか、後悔する気持ちでいっぱいです。どうすれば仲間外れにならず、うまく今のポジションから逃れられるでしょうか。
Doctor´s Comment
信頼できる友達に相談する、あえて反応しないなどの対応を いわゆる「いじり」問題ですね。「いじっている」方はただの冗談であり、自分たちに悪意はないと思い込んでいるケースが多く、一見、仲の良い友人同士に見えやすいため、周りも気づきにくいかもしれません。いじられている方はグループでの居場所を失うかも……という恐怖心から、「もうやめてくれ」と言い出しにくいという面もあるのではないでしょうか。友達グループ内に1対1で話せる、信頼できる友達はいませんか? まずその子に「実は今の状態がつらい」と相談してみて、そこからグループ全員に伝えていくのはどうでしょう。それが難しいなら笑わない、返答しない、その場を離れるなど、「嫌だ」という気持ちを態度で示す方法もあります。それでも変わらなければ、そのグループとの関わりを徐々に減らし、他で友人を見つけていきましょう。先生との悩み「担任の先生が怖い! 学校に行きたくない」(小4・女子)
子ども : 宿題のプリントを持っていくのを忘れた時、担任の先生に叱られて、他にも忘れた子がいたのに、1人だけ放課後に残って反省文を書かされた。ちゃんと書いたのに、次の日にまた書かされた。もう学校に行きたくない!母親 : うちの子はときどき忘れ物をするので、先生に「反省していない」と見なされたのかも。とはいえ少し厳しすぎると思うし、うちの子だけ反省文というのも納得できません。ただ娘の表現が大げさな恐れもあるので、先生に会って相談したいのですが、「モンスターペアレント」と思われるのも嫌です。
Doctor´s Comment
ここは、お母さんが先生とお話をするタイミングかもしれません 娘さんは担任の先生に対する信頼感を失っているように思えるので、ここはお母さんが先生とお話をするタイミングかもしれません。娘さんの話を大げさと感じるなら、先に娘さんの友達、あるいはお母さんご自身のママ友に、その先生の印象や対応について確かめるといいですよ。そのうえで学校に電話をしたり先生と会ってみてください。その際に、最も気をつけたいのは感情的にならないことです。特に話し始めは冷静に、落ち着いて話しましょう。伝えたいことをいったん下書きしてみると、客観的に見ることができます。下書きをする時は、お母さんが求めていることをはっきりさせましょう。例えば「子どもが反省文を書かされたことに抗議したい」、または「子どもが先生を怖がっていることを伝えたい」などです。もし先生と話しても納得できないようであれば、教頭や校長など管理職である先生に相談してみてもいいと思います。親との悩み「お母さんやお父さんが頑張れ、頑張れと言うのが負担」(小6・男子)
子ども : 僕は成績がちょっと上がっただけでも嬉しいのに、お母さんとお父さんが「よかったね。次は〇位以内を目指そう!」とプレッシャーをかけてくる。できなかったらどうしようと不安になるから止めてほしいです。両親 : 心から励ましているつもりの言葉が負担になっていたなんて、とてもショックです……。でも「よかったね」だけではモチベーションが上がらないのではないかとも思います。
Doctor´s Comment
まずは「できるようになった」成長ぶりを評価してあげましょう子どもの可能性や能力をできるだけ伸ばしてあげたいと思う気持ちが、息子さんの重荷になっているようですね。息子さんは「次は〇位以内を目指そう」のような励まし方がプレッシャーだと具体的に言っているのですから、最も大切なのはまずご両親が子どもを他人と比較する評価の仕方を変えていくことといえるでしょう。例えば息子さんの成績が少しでも上がったり、苦手な分野を克服できたりした時に、まず「前より成績アップしたね」「できることがまた1つ増えたね」と評価してあげるといいでしょう。さらに息子さんの成長を、次のテストや受験などの数か月単位から数年〜10年くらいのもっと長期的なスパンで評価してあげる視点を、親が取り入れていきましょう。子どもにとってそのような長い単位で物事を考えることはとても難しいですが、そういった考え方もあると親が子どもに教えるよいタイミングだと思います。モチベーションについても、息子さんの成長をしっかり認めてあげれば伝わるはずですよ。
自分の悩み「友達と仲良くしたいのに、話しているとだんだん嫌われてしまう」(小4・男子)
子ども : 友達と話していると、最初はいいのに、だんだん嫌がられてどこかに行かれてしまう。僕は冗談を言っているつもりなのに、相手が怒ることもよくあって泣きそうになる。母親 : 友達との関わり方が、相手が嫌がっているのにしつこく寄っていく、いつまでも話を切り上げずしゃべり続けるなど、自分勝手にふるまっているように感じます。このままでは、いじめの対象になるのではとヒヤヒヤします。
Doctor´s Comment
“嫌がるサイン”の具体例から、人の気持ちを想像させましょう「話しかける前に、友達がその時に何をしているかよく見てみよう」と教えましょう。要は、話しかけたいという自分の気持ちだけに集中せず、相手が今どんな気持ちで、何をしたがっているのかを想像させることです。また「人が嫌がることは止めよう」などの抽象的な表現がわかりにくいようなら、相手が嫌がっているサイン(返事をしない、離れていく、背中を向けるなど)について、「こんな時は相手が嫌がっているんだよ」と具体的に伝えてみてください。人の気持ちについて想像させる、自分は良くても相手が嫌な場合もある(自分と他人は違う)ことを理解させてあげましょう。多くの人と触れ合い、様々な経験をすることで成長していけるはずですよ。
小学生の悩みについて事例を挙げましたが、子どもの相談に対して親が「正しい答えを返さなければ」と構える必要はありません。まず子どもの話に耳を傾けてあげてください。悩みを打ち明け、いわば「愚痴って」いるうちに子どもの気持ちが落ち着くケースも多々あります。悩みを共有し合い、一緒に考えるつもりでリラックスして話をしてあげましょう。
【出典】 (※1)平成25年度小学生・中学生の意識に関する調査報告書 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/junior/pdf/b2-1.pdfdf (※2)内閣府 非行原因に関する総合的研究調査(第3回) https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/pdf/2-2-5-2.pdf (※3)第13回 21世紀出生時縦断調査(平成13年出生児) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/13/dl/h13_kekka.pdf