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「ヘリウムを吸うと声が変わるのはなぜ?」

執筆:北海道札幌市 北嶺中・高等学校 理科教諭 髙山 俊平


みなさん,テレビ番組で芸能人がガスを吸って,高くて面白い声を出しているところを見たことがありませんか?あるいは,パーティーなどでガスを吸って高い声を出して遊んだりしたことはありませんか?この変わった声はドナルドダックの声に似ているので,ドナルドダックボイスと呼ぶことがあります。実はこのときに使っているガスが「ヘリウム(He)」という気体です。では,なぜヘリウムを吸うと声が変わるのでしょうか?

 この疑問を解決するためには,「人が声を出す仕組み」「ガス中を伝わる音の速さ」の2つが重要になってきます。


① 人が声を出す仕組み
人が声を出すとき,まず肺から空気が出て,その空気が喉にある「声帯」という膜を振動させて音が出ます。声帯を振動させたとき,音の波になります。声帯から,声が出てくる口までの間に声道と呼ばれる大きな空間があり,その中で音の波が強め合ったり弱め合って打ち消し合ったりした結果,音が響き合うため声が出るのです。
声道の大きさや形は人それぞれで,人によって音の響き方も変わるので声も変わってくるのです。また,音の高さは振動する回数(振動数)が大きくなると高い音となります。
② ガス中を伝わる音の速さ
ヘリウムは2番目に軽く動きやすい物質です。空気中を音が伝わる速さは秒速340 mほどであるのに対し,ヘリウム中を音が伝わる速さは秒速960 mほどで,約3倍も速いのです。そのため,ヘリウムガスを吸って肺から空気を出すと,空気が3倍ほど速く音を伝えるので,声道の中を伝わる音の速さも3倍ほど速くなります。そうすると,音の振動数が大きくなり,音が響きやすい高さが変わってくるため,高い声になって聞こえるのです。
 ちなみに,クリプトンガス(ヘリウムと非常に性質が似た気体)を使うと,声が低く聞こえます。クリプトンは空気よりも重い物質であり,音が伝わる速さは遅くなってしまいます。そうすると,音の振動数が小さくなり,低い声に聞こえてしまうのです。
 

 ヘリウムを使うと,声が変わる理由はわかっていただけたでしょうか?もう少し,話を進めます。みなさん,楽器を演奏したことがあると思います。実は,リコーダーやトランペットなどの管楽器の中にヘリウムガスを満たして演奏すると,通常よりも高い音になります。

しかし,ギターや太鼓などの楽器では音の変化は感じられません。この違いは何だと思いますか?リコーダーやトランペットにはあって,ギターや太鼓にはないものを考えてみてください。それは,「音が響き合う空間」です。人間でいう声道にあたるものがある楽器であれば,ヘリウムによる違いが実感できるのです。

 最後に注意を1つ。ヘリウムガスは軽いので,風船の中に入れて膨らませるために使われます(ディズニーランドの風船の中にはヘリウムが入っているのです)。このヘリウムガスには酸素が含まれていないため,一気に吸い込むと酸欠状態になり,窒息して大変危険です。それに対し,声を変えるために使うヘリウムガスには,酸素が20%ほど入っているので,酸欠になる心配はありません。実験や遊びでヘリウムガスを使うときには,酸素が十分に含まれているかどうかを確認し,安全に行い,科学の楽しさを味わってください。

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