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旅と時間と好奇心

執筆:北海道札幌市 北嶺中・高等学校 国語科教諭 大谷 誓也

「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらえて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅をすみかとす。古人も多く旅に死せるあり。」

何の作品の冒頭か、わかりますか??
そうです。松尾芭蕉『おくのほそ道』ですね。小学校で勉強している方も多いかもしれません。「月日」や「年」といった『時間』を、永遠の旅人に例え、船頭(舟を動かす人)や馬子(馬をあやつる人)の生き方へのあこがれが述べられています。
この冒頭からは「まさに人の一生は『旅』そのものである」といった芭蕉の旅と時間に対する考えを読み取ることができます。ですが、なぜ芭蕉は旅に出たのでしょうか。「旅」のどのような点に魅力を見いだしていたのでしょうか。みなさんは、旅の魅力って何だと思いますか?
江戸時代の当時は道も舗装されておらず、みちのくの険しい山道が、旅人の行く手を阻むようなものであったことが容易に想像できます。
さて、もうすぐ年度末ですね。みなさんにとって『時間』の感覚とは、どのようなものでしょう。一年間は長かったですか?短かったですか?中学一年生に、一年間の感想を聞いてみたところ、「長かったようで短かったようで長かった(?)。」という不思議な感想を持つ生徒が多かったです。
私は、この一年は、あっという間に感じましたね。大人にとっての一年間は子どものころに比べると、短いように感じられます。
時間の感覚は子どもと大人を比べると、どのように異なるのでしょうか。
「主観的に記憶される年月の長さは、年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される。」
といわれています。年少者は、人生の経験値は少ないですが、初めてのことに多く出会います。つまり初めての体験を多く得ることによって、体感的な時間は密度が濃くなり、長く感じるということです。新しいこと・もの・人により多く出会うことによって、時間はより長く、厚みを持ったものとなります。

芭蕉にとって旅とは、「西行や李白といった旅の中に生きた古人へのあこがれ」という側面もありますが、「新しい物事を見たい・聞きたい・知りたい」という好奇心の発露でもあったのではないでしょうか。芭蕉は、みちのくの旅で色とりどりの新しいこと・ものに出会ったはずです。もしかしたら「長かったようで短かったようで長かった。」という感想を持ったかもしれません。
いわゆる「新鮮な体験」は、生活をより豊かにしてくれます。これからの一年間、みなさんは様々な場面に出くわすことになります。楽しいこともあれば、苦しいこともあるかもしれません。しかし、それらは初めての体験するようなことばかりであるはず。芭蕉同様、好奇心を忘れず様々なことに挑戦し、充実した時間を過ごしてください。

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