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カレーライスと肥料と窒素と

執筆:北嶺中・高等学校 理科教諭 青井 大樹


皆さんはカレーライスは、好きですか?カレーライスといえば、にんじん、タマネギ、ジャガイモ、豚肉と、お肉と野菜がたくさん入っていて、安くて栄養満点な食事として子供から大人まで人気があります。ところが、今年はこの野菜の価格に異変が起きています。


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例えばタマネギは、地域によって異なると思いますが、2022年の7月で1年前の2倍以上に値上がりしています。タマネギの生産は北海道が多く、猛暑や豪雨などの気候の影響で収穫量が減っていることは大きな原因ですが、円安により輸入品の価格が上がっていることも、一つの要素になっています。

さて、野菜を作るために輸入している物とはどんな物が思いつくでしょうか。皆さんが知っているように、植物が育つためには、水、光、空気が必要でが、これらを輸入する必要はなさそうですね。実はもう一つ大切なものがあります。それは、肥料です。植物が大きく育つために使う肥料には、窒素、リン、カリウムなどの「養分」が含まれていて、植物は根からこれらの「養分」を吸い上げて成長します。

これらの「養分」のうち、身近な窒素について考えてみましょう。窒素は、空気中に約78%含まれていて、たくさんあるように思えますが、実は植物は空気から窒素を取り入れることができません。つまり、空気中にいくら窒素がたくさんあっても、そこから「養分」である窒素を取り込むことはできないのです。それは、窒素という気体が化学的に不活発で、他の物質と反応しにくいという性質によります。スナック菓子の袋の中にも、この気体の窒素が入っていることで長い時間おいしさを保てているのです。

自然界では、土の中に住んでいるある種の微生物が、この気体の窒素を取り込んで、アンモニアの成分や硝酸(しょうさん)の成分などに変化させて、水に溶ける窒素の「養分」をつくっています。植物はこれを根から吸収して利用させてもらうことで、成長に必要な「養分」を手に入れることができているのです。

 ところが、畑で大量に野菜を育てようとすると、この微生物の働きだけでは、「養分」が足りなくなるのです。そこで、肥料が登場します。肥料を土に混ぜることで、この微生物の働きだけでは足りない「養分」を補っているのです。冒頭の、タマネギ価格が上がっていることの背景には、この肥料を輸入するときの価格が上がっていることも一つの原因として考えられます。

 最後に、空気から肥料の原料になるアンモニアの成分を、化学の力でつくる方法を紹介します。この方法を生み出したのは、ドイツのフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュという人です。彼らは、空気中の窒素と、水から作り出した水素を、砂鉄と反応させてアンモニアを大量につくる方法を開発しました。空気を原料に肥料をつくることで、たくさんの農作物を育てられるようになり、たくさんの人々の食料を確保することができるようになったのです。この功績で、ハーバーは1918年にノーベル化学賞を受賞しています(ボッシュも後の1931年に受賞)。

 このように、我々の生活に深く関わっているアンモニアですが、エアコンや冷蔵庫に使われていたり、燃料や電池としての活用が期待されていたり、低炭素社会の実現に向けてとても注目されている物質です。これからの、アンモニアの活躍に注目してほしいと思います。


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