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「重いものと軽いものを同時に落とすとどうなる?」

執筆:北嶺中・高等学校理科教諭 高山 俊平樹


 私たちの住む地球で、重いハンマーと軽い羽を同じ高さから同時に落とすと、どちらが早く地面に到達するでしょうか。実際に実験をしてみると、重いハンマーが先に到達します。これは、ものが落ちるときに物体は空気抵抗を受け、軽い羽は重いハンマーよりも空気抵抗の影響を大きく受けるので、地面に到達するまでに時間がかかってしまうからです。


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 しかし、空気抵抗の影響を受けない空間で同様の実験を行うと、結果はどうなるでしょうか。重いハンマーと軽い羽は同時に地面に到達するのです。これは、1971年にアポロ15号で月面へ降り立ったデイヴィッド・スコット宇宙飛行士が、空気のない月面上で重いハンマーと軽い羽を同時に落とす実験を行い、両者が同時に月面上に到達することを実際に確かめています。


 古代ギリシャ時代、哲学者であるアリストテレスは「軽いものはゆっくり落ち、重いものは速く落ちる」と述べました。このことに対して当時の人々は誰も疑いを持ちませんでした。無理もありませんね。当時は真空の空間を再現できず、実際に実験を行っても、空気抵抗の影響を受け、正しい結果が得られなかったことでしょう。このアリストテレスの主張は以後2000年間信じ続けられることになります。しかし、西暦1600年代に、イタリアの物理学者であるガリレオ・ガリレイは「軽いものが重いものよりゆっくり落ちるのは間違いである」とアリストテレスの主張を否定しました。空気のある地球上で実験を行ってもアリストテレスの主張どおりになってしまうのに、ガリレオ・ガリレイはどのようにして間違いを指摘したのでしょうか。それは「思考実験」という手法です。思考実験とは、頭の中で理想状態を作り上げ、実験を想像することから真実を見出す方法です。ガリレオ・ガリレイの思考実験を少しだけのぞいてみましょう。


 図1を見てください。10 kg の鉄球と 100 kg の鉄球があったとします。アリストテレスの主張「重いものほど速く落ちる」が正しいと仮定します。ここで、2つの鉄球を切れない糸でつないで落下させてみましょう。すると、次のように考えることができます。10 kg の鉄球は100 kgの鉄球に引っぱられるため単独のときよりも速く落下する。また、100 kg の鉄球は遅く落下する10 kg の鉄球に引っ張られ、単独のときよりも遅く落下してしまう。したがって、切れない糸をつなげた鉄球は、それぞれを単独で落下させたときの中間のスピードで落下するのではないか。一方で、次のように考えることもできます。図2を見てください。10 kg の鉄球と100 kg の鉄球をつなげて落下させたのだから、切れない糸をつなげた鉄球は合計110 kg の鉄球を落下させるのと同じになる。よって、100 kg の鉄球を落下させるときより重くなるので速く落下するのではないか。


 結果として生じる現象は1つになるはずなのに、2つの考え方ができてしまうことになります。ということは、アリストテレスの主張(=前提としている条件)が間違っているということになります。したがって、ガリレオ・ガリレイは「すべての物体は同じ速度で落下する」と結論付けました。お見事です!


 2000年間常識だったことが覆された歴史的瞬間です。みなさんも学校で習うことを当たり前とすぐにとらえるのではなく、なぜこんな現象が起こるのかという視点を大切にし、考えを追求してみてください。



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