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雪は天から送られた手紙である

執筆:北海道札幌市 北嶺中・高等学校  岡本修二


2月初旬、札幌では、コロナの影響でここ数年中止あるいは縮小せざるを得なかった「雪まつり」がようやく大々的に開催され、雄大かつ芸術的な大雪像が街の中心部に立ち並び、多くの観光客でにぎわいました。 しかし一方でこの時期の地元の人たちは、冷蔵庫の冷凍庫よりも凍てついた空気と、身長よりも高く降り積もる雪山との格闘で、うんざりするような毎日を過ごしています。


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このように、雪は北海道の人達にとって良くも悪くも生活の一部となっています。
例えば、上のマークには見覚えがあるのではないでしょうか。これは乳製品などのメーカーで「雪印」という会社のシンボルマークです。六角形の雪の結晶の中に、北極星がある構図となっています。六角形という美しい幾何学的な形が空高いところで作られるというのは、神秘というほかありません。それは水の分子(水の最小単位でH2Oと表現される)は氷になるとき、その性質や構造から六角形の形でくっつきやすいからです。ただし、空から舞い降りてくる雪の結晶は、その時の気温や湿度から様々な形に変化し、なんと100種類以上にもなるとのことです。下はそういったほんの一部の結晶のスケッチ例です。とても美しいですよね。

この神秘の美しさに魅入られて、人生を雪の研究に身を投じた、中谷宇吉郎(なかやうきちろう)という科学者がいました。北海道大学で雪の研究に没頭し、1936年に世界で初めて人工雪の製作に成功し、気象条件と結晶形成の関係を解明したのです。

しかし、その後時代は第2次世界大戦に突入していきます。日本軍は日本の戦闘機、いわゆる「ゼロ戦」が極寒の中でどのような凍り付き方をするのか、その調査と実験を、雪の権威者である中谷宇吉郎とその研究室に要請しました。北海道にはニセコという今でこそ海外にも人気のあるスキーの名所がありますが、その山頂付近に研究施設を作りゼロ戦を運び上げたのです。しかし日本が終戦を迎えたとき、ゼロ戦は山頂から谷間に捨てられてしまったようで、その後長い間行方不明となっていましたが、1990年にそのゼロ戦の残骸が山中で発見されたのでした。



雪が降ってきたら、ぜひそおっと受け止めて、その結晶を見てみてください。日が変わればまた違った結晶が見られることでしょう。そしてその様々な結晶が伝えるのは様々な上空の気象状況なのです。 中谷宇吉郎は言いました。「 雪は天から送られた手紙である。」と。 はかなく溶けて消える雪の結晶、そこに魅了された一人の科学者に少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


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