【中学受験】有名中学現役教諭の”理科”特別授業~スペースシャトルの帰り道 〜なぜ“S字カーブ”で降りてくるの?〜
有名中の授業は、好奇心をくすぐる仕掛けが盛りだくさん。そして、学ぶことの本質を突いた授業は、探求心あふれる生徒を育てます。さあ、あなたも知的な冒険に出かけましょう!
スペースシャトルの帰り道 〜なぜ“S字カーブ”で降りてくるの?〜
執筆:北嶺中・高等学校 理科教諭 小林 恒気
小学生のみなさん、こんにちは。北嶺中・高等学校で理科教員をしている小林です。2025年10月末から11月にかけて、北嶺のサイエンスプロジェクトの一環としてNASA研修に行ってきました。アメリカ、フロリダ州にあるNASAのケネディ宇宙センターを訪れ、スペースシャトル「アトランティス」を始めとした様々な展示物を見てきました。
展示されているアトランティスは、実際に33回宇宙へ行って帰ってきた本物の機体です。間近で見るとその大きさに圧倒されるだけでなく、機体の下にびっしりと並んだ耐熱タイルを見ることで、「宇宙から無事に帰ってくる」ということがどれほど大変なことなのかを強く実感しました。
もっと読む
宇宙から地球へ、シャトルはどのように戻る?
みなさんは、宇宙から帰ってくる宇宙船がどのように地球へ戻ってくるか知っていますか?「まっすぐ落ちてくるだけじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんね。しかし、スペースシャトルはまっすぐ降りてくることはありません。大きく左右に動きながら“S字カーブ”を描いてゆっくり降りてくるのです。今回は、その理由と、シャトルを守っていた特別なタイルの秘密についてお話しします。
熱から身を守る「耐熱タイル」
まず、スペースシャトルが宇宙から帰ってくるときのスピードについて考えてみましょう。スペースシャトルは、国際宇宙ステーションと同じように地球のまわりを回る「軌道」に乗って活動しているため、地球に落ちないようにものすごいスピードで飛び続けています。そのスピードは、なんと時速約2万8000kmにもなります。これは、東北新幹線「はやぶさ」の約90倍、最新鋭のジェット機よりもずっと速いスピードです。こんなに速いまま大気圏に飛び込むと、空気との摩擦でとてつもない熱が発生します。機体の表面は、一瞬で鉄を溶かすほどの高温になってしまうのです。では、この熱からシャトルはどうやって身を守っていたのでしょうか?
その答えが、シャトルのお腹側にびっしり貼られていた「耐熱タイル」です。このタイルは1枚あたり15㎝四方ほどの大きさで、場所によっては細長かったり斜めにカットされていたり、2万枚以上のタイルすべての形が違うという特徴があります。1枚あたりのコストは数千ドルとも言われ、取り付けや交換まで含めるとさらに高額になります。宇宙へ行くたびに割れたり欠けたりしたものを取り替える必要があり、シャトルの整備は本当に大変だったと言われています。
まっすぐ降りられない2つの理由
ここでみなさんは疑問に思うかもしれません。「そんなに強いタイルがあるのなら、そのまままっすぐ降りてきてもいいのでは?」と。しかし、答えはそれでも無理なのです。理由は2つあります。一つ目の理由は、まっすぐ降りると空気とのぶつかり方が急になり、タイルが耐えられる温度(約1200℃)を一瞬で超えてしまうからです。もしその温度を超えると、タイルの裏側にまで熱が伝わり、シャトルの骨組みが溶けてしまいます。実際にスペースシャトル「コロンビア」は、タイルの欠損が原因で帰還中に事故を起こしてしまいました。
もう一つの理由は、乗っている人への負担です。まっすぐ急に落ちると、空気との摩擦によって急ブレーキがかかり、速度が一気に下がってしまいます。そのときに「何十G」もの減速による力が体にかかることがあります。これは、みなさんがジェットコースターで感じる力の何十倍もの強さです。人間の体はそのような強い力に長い時間耐えることはできません。
そこで必要なのが、冒頭で紹介した“S字カーブ”です。左右に大きく曲がりながら降りることで、空気の力をうまく利用してスピードをゆっくり落とすことができます。まるでスキー選手が蛇行してスピードを調整するのと同じイメージです。ゆっくり減速すれば、タイルの温度上昇をおさえつつ、安全に地球へ戻ってくることができるのです。
身のまわりの「なぜそうなるのか?」を大切に
ケネディ宇宙センターで見たスペースシャトルは、引退した今も「どうやって人類が宇宙と向き合ってきたか」を静かに物語っていました。宇宙から帰ってくる方法ひとつをとっても、そこにはたくさんの工夫と努力が積み重なっています。世の中にはこのように「なぜそうなるのか?」を調べてみると驚くような仕組みがたくさんあります。ぜひ、身のまわりの疑問を大切にして、これからも学ぶ楽しさを忘れないでください。そしていつか、みなさんと一緒にNASAに行けることを楽しみにしています。 株式会社浜学園





















