その影響もあり、近畿中学入試の受験率の目安となっている解禁日初日の午前入試の受験者数ならびに受験率は、ここ数年は少子化の影響下にもかかわらず、微増を続けていたのが、今年はストップし、微減となった。 また、コロナウィルス感染への不安から、遠距離移動を伴う受験(例えば、近畿から首都圏の学校を受験するなど)については、敬遠されたため、減少した。

　ただし、こうした減少は、近畿における中学入試の勢いに翳りが出たことを示すわけではない。むしろ、今回のような悪条件のなかで、この程度の減少で済んだのはむしろ大健闘と言ってもよい。

　内容的に見ると全体に合格最低点・平均点が高く、倍率も落ちなかった。特に近畿における最難関校（灘、甲陽学院、神戸女学院、大阪星光学院、四天王寺、東大寺学園、西大和学園、洛南高等学校附属、洛星の９校）はもちろん、それに次ぐ難関校についても、中学受験における人気度はほとんど全く落ちていなかったと言える。
　また、合格最低点や平均点が高いのは、コロナ禍の影響下だからといって私学が安易に選抜試験を易しくしたとは考えにくく、むしろ中学受験の志望者は、かえって受験勉強に集中できた結果、学力（特に凝った問題を解く力よりは基礎学力）が高かったと見るほうが当たっていると思う。

　そして、少子化と募集活動不足というダブルパンチを受けながら、受験生の減少を最小限に食い止められた最大の要因のひとつがコロナ禍において私立中・高がオンライン対応で見せた優位性だ。
　コロナ感染が広がり、緊急事態宣言下で学校が休校になっても、私立中・高では、もともと生徒にタブレットなどが行きわたっているところも多く、ＩＣＴ関連の取り組みも進んでいるため、家庭と学校がオンラインシステムで結ばれ、平常と変わらないペースで自宅学習が進められた学校が沢山あった。このことは多くの保護者に公立中・高での対応との差を見せつける結果となった。
　したがって、２０２０年はコロナ禍の影響で、危機対応における私立校の優位性が図らずも浮き彫りとなったことで、「やはり私立はすごい。」という認識が大きく広まった年であり、それが２０２１年の中学入試においては、受験者減少を緩和していると言える。

　さて、そのような状況で迎える２０２２年であるが、まずマイナス面から見ると、少子化は相変わらず容赦がないし、コロナについては、少なくとも日本ではかなりウィルスの感染が収まってきたとはいえ、いつ新種が出現するか分からない変異株のことを考えると決して楽観はできない。
　 　一方プラス面については、上述のコロナ禍のなかで見せた私立の優位性は確かにインパクトがあった。ただし、各学校での取り組みがすべて同じレベルというわけではないので、今後は、私立の各学校間での差が、保護者の目にさらされることになる。
　コロナ感染対応にしてもオンライン学習対応にしても、私学においては最難関、難関、中堅を問わず、従来に比較すれば大幅に充実したのであるが、ブランド力がない学校ほど保護者からより厳しいチェックを受ける。つまり、上述のような取り組みがよくできていたというだけではなく、広く受験生とその保護者に知られているかによって各学校の間で、評価が分かれると思われる。

　２０２２年度は、コロナ感染が抑制されていれば、マイナス面とプラス面がほぼ拮抗し、受験者数は、全体として横ばいか微増となる可能性が高い。
　入試傾向としては、「大学附属の学校人気」がまだ続くだろう。また、「選抜方法の多様化」（英語をはじめとする単科入試、自己推薦型、適性検査型、思考力テスト型など）はますます盛んになっているが、これはさらに厳しくなる少子化のなか、公立トップ高志向の家庭にも中学入試に関心を持ってもらい、受験生の募集の裾野を広げるための重要な役割を果たすことになるだろう。

≪予告≫

　さて、今後＜その２＞以下では、前年度のこのシリーズで「人気校」としてとりあげた学校に、まだ取り上げていなかった学校の「今」をいくつか加えてお伝えする。
進学教室浜学園