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同志社中学校

進学教室浜学園が独自の切り口で中学校を取材し、その魅力をお伝えしていきます。

同志社大学の設立者である新島襄は、日本人で初めてアメリカの大学を卒業した人物です。そんな新島先生の教育観は、150年たった今だからこそ生きる、進取の精神にあふれたもの。今回は、「まるで博物館のような学校」そして、「そこにいるだけで学びたくなる学校」といわれる同志社中学校を取材しました。
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同志社中学校・高等学校 副校長 竹山幸男先生と浜学園経営企画室渉外担当 山田

世界の大学の原点―創立者・新島先生の学んだ
アメリカ・ニューイングランド地方の学校建築を模して

―同志社中学校といえば、雑誌『現代建築』に取り上げられるほどの充実した施設で有名ですね。私も今日、あまりの景色に驚いてしまいました。
同志社中学校は1875年に開校した同志社英学校をルーツとして、135年の間、創立の地である今出川キャンパスにありました。大学の今出川キャンパス整備計画により、2010年より地下鉄の国際会館駅前の新キャンパスに移転しました。 新たな校舎を構想するにあたって、まず「これからの学校に必要となる環境とは?」と考えました。そして教職員が日本全国、海外の学校まで視察して学びを深めた結果、「教室は単に先生の講義を受けるためだけの場所ではない」こと、「教育の中身はもとより、教育環境が非常に重要である」ことに気付かされました。 一般に、日本の学校は動線を主とした「機能的な学校」です。片側が廊下になっており、横に教室が並ぶ「ハーモニカ型校舎」で、校舎内の色合いは灰色か真っ白が主流です。どこか無機質な印象を与え、たとえ最先端の機器が置かれていたとしても、人を育む温かさや落ち着きに欠けるところがあります。 かつての時代の要請や、そもそも広大な敷地が取りにくい日本の事情などがそうさせるのかもしれませんが、もはやこれからの時代の教育にフィットするような設計ではないと感じていました。 新しい校舎は、そうした一般的な校舎とは違って生徒が主体となっていろいろな学び方ができ、生徒たちの学習成果や発表物が掲示されているような創造的な場所を生み出す。学校全体が学びの空間として機能するような形のものが良いと考え、「教科センター方式」を採用したわけです。 校舎建築にあたっては、設計者を選ぶ段階からこだわりました。設計者の実績を拝見しコンペなどの選考を経て、東大で長年建築学の教べんをとられ、ご自身も設計事務所を構えられている香山壽夫先生にお願いすることになりました。 香山先生は大学やホール、劇場などを手がけられている設計者で、空気の流れや光の取り入れをうまく扱いつつ、人が育まれる環境を設計するのがお得意な方です。 新キャンパスのエリアは京都の風致地区に指定されており、高さや色彩の規制があります。その規制も逆手にとって、ゆったりとしていて、まるで欧米の街並みを彷彿させるような建築空間に仕上げていただけたのは、香山先生のお力のなせる技でしょう。駅の目前という好立地も人気です。 同志社の今出川キャンパスの建築は、創立者である新島襄が学んだニューイングランド地方の大学を模しています。 ニューイングランド地方の建築はイギリスにルーツを持ち、レンガと芝生がメインです。ハーバード大学やイェール大学もそうですね。同志社の今出川キャンパス、そして現在の同志社中高は、その流れを汲むことになります。日本離れした豊かなセンスが溢れる空間とでも言えばよいでしょうか。 特に海外で勉強したことのある方は日本の従来の感性を超えたキャンパスデザインに驚き、まるで海外の学校にいるような感覚を持ち、何回でも来たくなるそうです。

授業のクオリティアップにつながる「教科センター方式」

―外観だけでなく、教室や授業運営のスタイルにもこだわっておられるそうですね。「教科センター方式」について詳しくお伺いできますでしょうか。
「教科センター方式」とは、簡単にいうと「先生は教科ごとの教室にいて、生徒が毎時間それぞれの教科教室へ移動する方式」です。日本の従来のやり方でも理科や音楽、美術、技術、家庭などの科目はこの方式を取っていますね。ただ、数学や国語、英語などの教科に関しては、教科専門の特別教室がありませんでした。 特別教室がないと、先生の方が毎時間それぞれの教室へ移動する形になります。授業が終わったら一旦職員室へ引き返して、次の授業の準備をして次の教室へ行く。そうすると、先生ひとりで色々なものを持つのは難しいですから、持っていける教材・教具はどうしても限られる。また、出向いた先の教室で、その日に行う授業内容に応じた机の配置換えをするなどの準備時間もない。 その点、先生の方が教室で待って生徒が移動してくる「教科センター方式」ならば、先生は授業のための十分な準備をして生徒を迎えることができます。全教室、電子黒板・プロジェクターを完備し、生徒は一人一台自分のiPadを持っています。さまざまな教材・教具も使いやすくなり、授業のクオリティアップにつながるわけです。 近年特に海外の学校やビジネスの世界ではリベラルアーツ(教養)が見直されつつあり、これまで日本で「副教科」と呼ばれてきた教科の重要性も再認識され、創造性を育む教育が重視されています。AIが様々な頭脳労働を肩代わりしてくれる一方で、人間の側にはより創造的な力が求められる時代が既に来ています。 学校内には、さまざまな「学びの仕掛け」があり、子どもたちの知的好奇心・探求心を刺激します。校舎内はオープンな空間、配置が大切にされて明るくさまざまなスペースや居場所があるので、900人以上の生徒がいるようには見えません。キャンパスに来られた保護者の方は、「自分が改めて中学・高校時代を過ごせるなら、このようなところで勉強したい」とおっしゃいます。 最近は学校だけでなく、企業のオフィス環境やワークスタイルも見直されつつあります。共働で話しながら仕事のできるスペースがあったり、「個人の机」という概念をなくしたりと活動の場所は進化しています。 大学でも図書館とは別に「ラーニングコモンズ」という空間が作られています。静かに一人で勉強するだけではなく、グループでディスカッションをしながら学べる空間ができてきたわけですが、こうした教育環境整備の面では、特に中学・高校では日本は遅れていると言わざるを得ません。 教育の中身を変えていくのは言うまでもなく大切ですが、その前提としてのキャンパスデザイン、教育環境(校舎の作り方など)が非常に重要だという考え方が、同志社中学校のキャンパスでは生きているのです。 同志社中学校では全ての理科の授業を実験室で行い、そこには実験助手もいますし、豊かな標本が展示されています。高校の理科館には天体望遠鏡も備えています。ここまでサイエンスの教育環境施設が充実している学校は、全国でもまれです。創立143年の「同志社」という伝統の上に、つねに次代を見据えた変化と先見性を重ねる姿勢、そうした懐の深さこそが本校の魅力なのです。


知的好奇心・探求心を高める「同中学びプロジェクト」

―教育プログラムの面でも、かなり充実したラインナップをお持ちであると聞いています。
同志社中学校では「同中学びプロジェクト」と名付け、幅広い体験学習を行なっています。京大iPS細胞の研究所や東大スーパーカミオカンデ(※)、同志社大学の研究室を訪問したり、プログラミング教室と提携したりしています。国際交流を通じての英語研修もありますし、裁判所見学や科学技術、芸術に関連したものもあります。年間120以上の企画に好きなだけ参加することができます。 こうした取り組みは普通、超難関校だけが実施していたり、特進クラスの子だけが行けたりという制限がつきものです。しかし同志社中学校では、希望すれば生徒は誰でも参加することができます。 技術の発展とともにオンライン学習などを利用することで、個人的な勉強はいくらでもできるようになってきました。一方で、人と一緒に何かを学ぶこと、人と一緒に何かを創り出すことについては、やはり学校という場でしかできない面があります。 机上の勉強だけでなく、さまざまに広がりや厚みを持った教育が受けられるのが本校の良さなのです。 特に保護者の関心が高い国際交流プログラムについては、「英語を」学ぶのではなくて、「英語で」学ぶ視点も含めて内容を考えています。カナダやニュージーランドへのターム留学(学期留学)はじめ、ホームステイ先や現地の学校での授業交流を行う語学研修(アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、台湾、韓国など)です。アメリカ・ハーバード大学、MITでの大学講義で受けるコースから、ハーバード大学生とのイングリッシュキャンプ、アジアの中高生とともにSTEAMキャンプを行い、「英語で」学ぶ体験もできます。しかも中学生の段階でそのような体験ができるという点が、保護者の方から評価していただけるポイントです。 さらに特徴的な取り組みとして、同志社中学校では始・終業の「チャイム」を鳴らしていません。生徒が自分で時間を見て、自主的に動くようにさせています。 新キャンパスに移ってきた当初、実践してみて驚いたことは、先生よりもむしろ生徒の方が適応力が高かったということです。生徒はせいぜい1、2週間もあれば、「チャイムなしのタイムマネージメント」に慣れてしまいます。時間がかかったのはむしろ先生の方で、定着まで1ヶ月程度はかかったでしょうか。 この傾向は海外研修でも同じです。大人になってから海外へ行くと、馴染むまでに時間がかかってしまう。けれども中学生であれば、早ければ5日間程度で英語への適応力が身につきます。あらゆる面で、自己変化の可塑性が高いのです。
((※)スーパーカミオカンデ・・・岐阜県飛騨市に設置された世界最大で最高精度を持つニュートリノの観測装置。「ニュートリノ」とは電荷を持たない素粒子で、宇宙には豊富に存在するがほとんどの物質と反応しないため非常に見つけにくい。スーパーカミオカンデは宇宙から大量に降り注ぐニュートリノを巨大な水槽を使ってとらえるための装置である。)


同志社大学までの推薦進学制度がある中で「未来への学力」を育む

―保護者の方からは、どのような点で着目されているのでしょうか。
やはり、大学までの推薦進学制度による進路の保障という面が大きいように思います。京阪神には私立・公立問わず進学実績のある学校が多いのですが、同志社大学までの進学・進路保障を含めた教育環境として本校は高く評価されています。実際、名古屋や姫路といった遠方からも新幹線で多くの生徒が通学してきてくれています。名古屋からわずか1時間という立地も人気のひとつでしょう。 保護者の方は、中学入試を検討される段階では、まだ大学入試の難易度まではご存じないことが多いです。大学入試に関する資料を準備し、同志社大学への入学難易度をお見せすると「思っていたより難しい大学なのだ」と分かっていただけます。2020年の大学入試改革の中身が不透明であることもあり、同志社大学への推薦進学制度があるのは大きな安心材料のようです。 また、同志社大学の主要企業就職率は関関立と比べても非常に高い実績となっています。 この理由は、もちろん本人の努力があることは言うまでもありませんが、同志社中学校・高校と進学した生徒たちが中学生時代から大学生の学びに必要な「多面的な学び」を経験していることによるものでしょう。 同志社中学校・高校では、クラスで演劇に取り組みます。現在、教員志望大学生の講演会などで学芸会の経験の有無を聞いてみると、2割から3割程度の学生しかその経験がないようです。 日本では90年代に「ゆとり教育」が実施され、結果、PISAの学力テストが大幅に低下したという批判を受けるようになりました。その揺り戻しを受けて2000年代にはまた、授業時間の延長が求められるようになりました。一般的な学校ではそれによって学校行事の時間が削減されたことで、生徒が主体的に行動する機会が極端に少なくなりました。そして「指示待ち人間」が増え、社会に出てから自分でものを考えることができない、表現できないという弱点が明らかになりました。 2010年代の教育には、90年代、2000年代の両方を踏まえたプログラムが求められています。そのような中でこの演劇が、社会人になったときの組織で活動する力、コミュニケーション能力を育む点で非常に役に立つのです。生徒が900人、保護者も300人以上が観賞でき、京都が世界に誇る劇場「ロームシアター京都」の舞台で演劇をする。そのプロセスの中でチームワークやリーダーシップを学び人間力を養っていく。このような経験で得られたバランスの良さが、大学における就職率にも影響しているのだろうと思うのです。


OECDの指針と新島襄先生の思想

―さまざまな面で新島襄先生の思想が、同志社中学校には脈々と受け継がれているのですね。
経済協力開発機構(OECD)では2030年の教育のあり方についての指針である「エデュケーション2030」を発表しています。AIの発展に伴う「第4次産業革命」の真っ只中に入りつつある現在、未来に生きる子ども達に必要とされる力は確実に変わっていくはずです。OECDの掲げた指針はそれに基づくもので、基礎知識が重要なのはもちろん、アイディアを表現・実行する力をつけ「新たな価値を創造するイノベーションを生み出せる」よう、これまでの教育方法や内容を転換していく必要があるというものです。 新島襄先生が150年前にアメリカで学び志したのは、まさにこのような教育でした。ものごとの発想力が豊かで柔軟性があり、思考の自由さが何よりも大切。そのような考え方は、同志社の長い歴史の中で脈々と引き継がれてきました。 子ども達がみな、それぞれの個性を伸ばして進路を選んでいく。OECDの示した指針は、新島先生の教育理念が150年後の現代になって再評価を受けている印象がします。本校には、ノーベル賞を受賞した本校卒業生もいれば芥川賞を取った本校卒業生もいます。「人ひとりは大切なり」という創立者の新島先生の言葉に表されている、キリスト教主義教育が同志社の教育理念です。一人ひとりの個性を生かした同志社教育の多様性が多くの人々を惹き付けている理由です。

―どうもありがとうございました。

取材日:2018年3月1日
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