金蘭千里中学校・高等学校 企画室中村聡太室長と浜学園経営企画室渉外担当 山田
「素直は心の才能」である
―金蘭千里中学校さんが校舎を建て替えられたのは、十数年前のことだそうですね。それにしては、まるでつい最近建てられたかのような美しさを保っていらっしゃいます。
本校の校長はいつも、「素直は心の才能」と申しております。 その言葉の通り、本校にはたいへん素直な生徒が多く集まってくれています。施設にしても、建て替え後、これだけ美しい状態を保ち続けているというのは、本校の生徒の質の高さを象徴しているのではないかと思いますね。落書きもなく、物や施設を大事に使う精神が感じられます。生徒の学びを支える「二つの要」
―金蘭千里中学校といえば、学力を鍛え、伸ばしてくれる学校として名前が知られていますね。高いレベルの学びを支えている仕組みとは何なのでしょうか。
本校の学びを支えている要素はいろいろあるのですが、主たるものとして二つのポイントを知っていただきたいと思います。◇学習習慣を育む、名物「20分テスト」
まず一つ目は、本校の名物ともいえる「20分テスト」です。金蘭千里中学校・高等学校が創立されてからは50年以上が経過しておりますが、創立当初から、本校では中間テスト・期末テストを行っておりません。今では小テストを導入している学校はたくさんありますが、50年以上前となると、「中間・期末テストを行わず、毎日の20分テストのみ」というのは、当時としてはかなり思い切った決断だったのではないでしょうか。 通常の「中間・期末テスト」方式をとると、テストの直前に、長い期間で学んだ内容を詰め込むような形で勉強する生徒が多くなります。しかし、そういった「一夜漬け」のようなやり方は、本当の勉強ではありません。直前に詰め込むのではなく、日々の努力を積み重ねさせる目的で、20分テストという仕組みになりました。 20分テストの実施時間は、毎日の朝礼のあと(8:35〜8:55)です。1日1科目で行なっていき、2週間ほどで全科目が1サイクルします。すると、1科目あたりのテスト範囲は2週間分ということになりますから、通常の定期テストと比べて小刻みに生徒の学習をチェックできますし、生徒の方でも否が応にも学習習慣が身につくわけです。 20分テストで望ましい成績を取れなかった場合には、追試、補習、やり直しノートなど、各教科の教員が定めた方法でフォローアップします。テストを「やりっぱなし」にしない体制を整えているというわけです。これが本校の、学力を伸ばすための一つ目の柱です。◇一人一人へのフォローが行き届く「少人数制」
「20分テスト」に次いで重要なのが、少人数制です。本校は創立以来、1クラス30人制をとっています。そのため、教員は生徒一人一人に時間をかけて、しっかり向き合うことができます。 先ほども述べましたが、20分テストは細かく生徒の学習をチェックできるだけでなく、細かくフォローするための仕組みとしても最適なのです。少人数で、生徒一人一人に手をかけられることの良さと、20分テストという仕組みがうまくマッチしているというわけです。 また、進路指導でも少人数制の良さが発揮されています。高校生になり、志望校がそれぞれ分かれていく生徒に対し、細やかな対策を提供できるのです。 「〜講座」という形で志望校別の対策を行う従来の形ではなく、本校ではより深く、1対1の指導をすることができるわけです。志望校が違えば対策も違い、英作文の添削などが必要となる生徒も多くなります。教員の方は大変ですが、これも少人数だからこそできるフォロー体制であり、本校の進路指導は非常に「誠実」なものであると自負しています。「20分テスト」を利用し、時代の流れにも柔軟に対応
―2020年には、大学入試改革が行われます。金蘭千里中学校では、新しい大学入試に対してどのような対応をされているのでしょうか。
ここでもやはり、先にお話した本校独自の「20分テスト」が活きてきます。 20分テストは、「小テスト」ではありません。実物を見た方は「えっ!」と驚かれることが多いのですが、おそらく保護者の方が考えられている以上に本格的なテストです。試験時間が20分あれば、証明問題、論述問題、思考力を問う問題など、確かな学びを要求する問題を出題することができます。この20分は、教員が自由に使うことのできる枠。今後、大学入試がどのような形に変化していっても、この枠を使って柔軟に対応していくことができるのです。 1学期間中には各教科約10回のテストがありますから、1回目は論述、2回目は思考力……というように、毎回問う分野を変えた設計もできますので、多面的に生徒の能力をはかり、可能性を伸ばすことができます。それこそが20分テストの良さなのです。
自らのキャリアプランを考えさせる6年間
―金蘭千里中学校に通う生徒たちには、将来、どのように活躍することを期待して進路指導をされているのですか。
金蘭千里中の進路指導は誠実であると申しましたが、具体的には、小論文・面接の対策まで行っていることがそれを表していると思います。 たとえば、医学部の入試には面接があります。たとえ筆記の点数が良くても、面接で「医師にふさわしくない」と判断されれば、不合格になることもある。それくらい、面接試験は重要なものです。 医学部でなくとも、いまの時代、「いい大学に合格できたから、人生が幸せになる」というわけではありません。自分はどうなりたいのか、どう活躍したいのかをしっかり考えて、小論文や面接を通して表現できなければいけないのです。 本校の進路指導では、「こうなりなさい」と押し付けることはありません。本当は東大に合格する実力があったとしても、「自分のキャリアを考えればこっち!」と生徒が言うなら、「よっしゃ、頑張れ!」と送り出します。 各々が描くキャリアを6年を通して考えさせ、ときには「そんな考えでは甘い!」と叱りながらも、生徒のキャリアを実現させる。それこそが、本校の進路指導だと考えています。伝統という「太い幹」の延長上に、三つの柱
―金蘭千里中学校といえば、50周年の学校改革で、ますます魅力的な学校となってきているそうですね。具体的にはどのような点が変わったのでしょうか。
「50周年改革」といっても、「今までとまったく方針の違う学校にした」というわけではありません。50年の伝統という太い幹を、さらに延長していくようなイメージです。 本校の「幹」にあたるのは、「人間力を伸ばし、学力を伸ばす学校」というあり方です。その目標を改めて考えていくと、「三つの柱」にまとまりました。 それは「学びの充実」、「『本物』を体験できる行事」、「クラブの拡充」です。◇学びの充実
「学び」に関して申し上げますと、各種ノート類が充実いたしました。まずは「学習記録ノート」。生徒たちが学習した記録をつけていくもので、1週間ごとに集計させると、生徒たちに自己反省を促すことができます。学習の総合時間が少なかったり、無駄な時間があったり、学習時間は長くても効率が悪かったり……。そういった点に自分で気付かせ、学習効果を上げる目的で導入いたしました。もちろん担任も目を通し、必要に応じてアドバイスをしています。 他にも、語彙力を高めることを目的とした「ことのはノート」、行事を通して感じたことを表現させる「体験ノート」も導入しました。行事を単に「楽しかったね」で終わらせてしまうのではなく、何を感じたか、何を学んだかを表現することを狙ったものです。表現に関して言えば、中学では「演劇ワークショップ」を開講しています。これはサマーコース(夏期講習)、ウィンターコース(冬期講習)で授業時間に余裕のあるときを使い、プロの劇団員の方々をお招きして、表現する・伝えるとはどういうことだろう? という点について話し合いながら考え、実際に行ってみるものです。 加えて、ナレッジキャピタルで行われている、「未来の仕事」を考えるアイディアコンテストにも本校の生徒は応募しています。 これは、今の社会にどのような仕事があるのか、どういう問題が存在しているのかを知った上で、未来にはどのような仕事が生まれるだろう?と考えるコンテストです。全国から4000人以上が応募するコンテストですが、ありがたいことに、本校の生徒は2年連続で上位7名に選出していただきました。選ばれると、大人数の前で自分の考えた「未来の仕事」をプレゼンすることになるのですが、本人にとっては大きな自信になるようです。 なお、設備面ではICT教育の環境が整いました。全教室にスクリーン、プロジェクター、Wi-Fi環境が完備され、教育をサポートしています。