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樟蔭中学校

進学教室浜学園が独自の切り口で中学校を取材し、その魅力をお伝えしていきます。

大正6年(1917年)、大阪・河内に建学された樟蔭中学校は、今年で創立100周年を迎えます。
「樟蔭」という校名は、当時理想とされた女性、楠木正成の妻である「お久(久の方)」のいつまでも残る遺徳(余芳)にあやかるということで、「樟(くす)の余芳の蔭(あやかるの意)」から名付けられたそうです。 その名の通り、「高い知性」「豊かな情操」を育む同校にお話を伺いました。

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樟蔭中学校 入試部広報委員長 清川一也先生と浜学園経営企画室渉外担当山田

―樟蔭さんの敷地には、ずいぶんおしゃれな建物が多いですね。
ユニークな建物群は、創立者である森平蔵(もり・へいぞう)が材木商だったことに由来します。

樟蔭中学校が建学されたのは、大正6年のことでした。
大正時代といえば、「大正デモクラシー」の時代。女性の進学率がどんどん高まっていった時期です。ところが残念なことに、ここ大阪では、学校数という面ではいささか手薄だったのです。

創立者であり、材木商として一財を成した森平蔵は、このままではいけないと感じたのでしょうか、私財を投じて女子教育の学校を作ろうと動き始めました。
その際、材木商ならではの「普通の建物ではいけない」というこだわりが影響して、現在にも残る「大正モダニズム」を感じさせる建物が作られたというわけです。

創立以降も、樟蔭の敷地内には、それぞれの時代を代表するようなデザインの建物が作られ続けてきました。
もっとも古いものは、入り口付近に建っている「樟古館(しょうこかん)」。木造の建物で、樟蔭設立当時に建てられ、現在もそのまま保存しております。この建物に使われている技法は繊細をきわめ、一度解体してしまうと、再度組み上げることが難しいと言われるほどです。そのため移設の際も、そのまま引きずるような形で場所を移す必要がありました。


それから、創立10周年を記念して建てられた「記念館」。この建物が建てられた頃にはすでに昭和に入っていたため、楠古館とはまた違った趣があります。寄付を募り、10万円(現在の価値に換算すると3000倍〜5000倍程度の金額)という金額を集めて建てられたと伝わっており、学校のシンボルのような建物だと言えます。


その他にも、構内にはレンガ造りの建物や、ガラス張りの近代建築なども多く建てられています。
樟蔭が歩んできた歴史を一度に見渡すことができ、一種の感動があるように思います。
記念館の内部と図書館


「知・情・意」を兼ね備えた女性を育む

―今年で創立100周年とのことですが、建学の精神について教えてください。
先ほども申し上げました通り、樟蔭がここ、大阪・河内に建学された目的は「女子教育を充実させ、真に成熟した女性を育成する」ためです。
建学当時、理想の女性とされていたのは楠木正成の妻・お久(久の方)でした。お久の良妻賢母ぶりにあやかろうということで、学校名も「樟蔭」とし、女子の教育を担う意気を表明したわけです。

樟蔭の建学の精神は「知・情・意」。「高い知性」「豊かな情操」を備え、物事をつらぬく意志を持った女性を育てることです。

女性が社会へと進出していくためには、まずは「知」、つまり「高い知性」が求められます。
高い水準の教育を提供し、高い知性を育てていくこと。これは、時代を担う女性を育む上では重要なことでしょう。

とはいえ、ただ知性を持っているだけでは、人に影響を与えることはできません。そこで求められるのが「情」、つまり「豊かな情操」です。

樟蔭では、さまざまな行事を通して、生徒の情操を育んでいます。
平成20年ごろのことになりますが、「オール特進」という方針に転換したことがありました。生徒をただ、内部進学で大学まで送り出すのではなく、積極的に他の大学へ送り出していこうとした時期です。そういう方針をとろうとすると、どうしてもエネルギー・時間が必要な「行事」の必要性が問われることになります。教員の中にも「行事は必要ないのではないか」と考える者がおり、生徒を思う気持ちのあまり、対立してしまったこともありました。

樟蔭の行事のほとんどは「希望参加制」をとっており、勉強に集中したい子、行事にエネルギーを注ぎたい子、どちらも尊重するには、この形がベストだと思います。しかし、特進コースの生徒は希望しても参加できないというふうに制約をきつくした時期があり、その後検討して制約をゆるめました。そうして様子を見守っていたのですが、意外なことに、行事に参加できる環境のほうが生徒のモチベーションが上がり、成績も自然と上がっていきました。「なるほど、やはり行事は必要だったのだな」と感じ、規模を縮小することなく、今もさまざまな行事が行われております。
スキー行事

そして最後に「意」、つまり「意志力」。

人に影響を与えるためには、自分自身が何かをやりぬく力が必要とされます。
樟蔭では、生徒の自主性を育むため、行事などでは「生徒に任せる」対応をすることが多くなっています。オープンスクールの運営でも、協力者を募れば、本当に多くの生徒が自主的に手を挙げてくれます。あまりにも希望者が多く、人が余ってしまうくらいです(笑)。

そんな先輩たちの姿を見て、後輩が「来年は私も活躍してみたい!」と言い出すことも珍しくありません。社会に出た後も、きっと役に立つことと感じています。


些細な頑張り・変化を見逃さない

―樟蔭さんといえば「面倒見のいい学校」というイメージがあります。「樟蔭ならでは」という取り組みはありますか。
樟蔭ならではの取り組みとしては、「樟蔭レッスン」「プライドカード」「生活学習ノート」の三つが挙げられます。

まずは「樟蔭レッスン」。これは、品位のある素敵な女性を育むための講座です。中学1年の初めに行い、挨拶・言葉遣い・身だしなみ・教養に関する内容となっています。

こちらの「樟蔭レッスン」を発案したのは校長で、昨年から実施しております。樟蔭に来てくださったことを誇りに思ってほしい、という校長の思いが詰まっているだけでなく、我が校は女子校をつらぬき通すという覚悟の表明でもあります。

次に「プライドカード」ですが、こちらも発案は校長で、平成25年度からの実施となります。ゴミを拾う、ささやかな気遣いをするなど「目立たないかもしれないけれど、頑張っている」姿を教員が見かけたら、すぐに校長へ報告します。報告を受けた校長は、一人一人の頑張りに応じたコメントに偉人の格言を添えて、自宅へ直接発送。なかなか目立てない生徒にも、「私のことを見てくれている」と感じてもらい、自己肯定感を高めてもらおうという取り組みになります。

樟蔭の校長は、毎朝校門に立ち、すべての生徒の顔を見ながら朝の挨拶をしております。
そのようにして生徒の顔を見ていると、どうしても引っ込み思案な性格で、大きな声がなかなか出せない子もいます。ところがそういう子が、よく見ていると、廊下のゴミを拾っていたり、小さな気遣いができていたりする。人前に出て目立ったり、点数や数値で形にできない頑張りだからこそ、なんとかして讃えてあげられないものか……。そういう思いから、このアイディアが生まれたということです。

讃えるといっても、引っ込み思案な子は、みんなの前で大きく表彰されることを好まないケースもあります。そこで「自宅へ直接発送」という形にしました。いわばサプライズのような形で、保護者の方、そして生徒自身からも好評を得ております。昨年度は200枚以上のカードを発送いたしました。
登校風景

そして最後は「生活学習ノート」です。これは、学校が勉強志向になったときにスタートしたもので、生徒がその日に考えたことを書き、毎朝担任に提出することになっているノートです。
担任はノートを受け取ったら、生徒の下校時までにチェックし、コメントを書き込んで返却します。コメントは生徒だけでなく、保護者もチェックしてサインすることになっており、担任・生徒・保護者の三者間で緊密なやりとりをする助けになっています。どんな些細な変化も見逃さない、というわけです。


さまざまな事情の生徒を支える「キャリアサポートクラス」の存在

―「いじめ」など、精神的な面で不安がある生徒に対して、きめ細かい対応をなさっているそうですね。
子供が「学校へ行きたくない」と言った場合、その言葉の意味を掘り下げていくと、「教室へ入りたくない」という意味であることは少なくありません。勉強をしたい気持ちはあるのだけれど、教室へは入りたくない。それが、「学校へ行きたくない」という言葉となって現れてくるわけです。

樟蔭では、さまざまな生徒をサポートする制度をしっかり設けています。
具体的には、「キャリアサポートクラス」という特別な部屋を設置し、そこだけの担任を置いています。

いわゆる「保健室登校」のようなスタイルでは、勉強に遅れが出てしまったり、場当たり的な対応にとどまってしまったりする可能性もあります。勉強の進度が遅れると、心理面での困難が解消されたあとも、教室へ戻りにくくなります。そうならないよう、こちらの部屋で勉強面をサポートする体制を整えているというわけです。

そのほか、樟蔭では「担任も昼食を教室でとる」ことにしています。
そうすることで、まだ「いじめ」という段階ではないけれども、なんだかうまくいっていない……というような状況をいち早く発見することができます。実際に、生徒同士がケンカをして、離れた場所で昼食をとっていることに担任が気づき、間に立って話を聞くことで解決に導いたケースもありました。

また、心理的な問題だけではなく、言語の面で、外国籍の生徒や帰国子女の生徒が壁にぶつかるケースもあります。樟蔭では大学との連携を生かし、たとえば「数学の問題を英語で説明する」など、言語面でのサポートも行っています。どのような事情の生徒であっても、最大限にサポートしていく体制が整っています。


幅広い生徒を受け入れる3つのコース

―樟蔭さんには、どのようなコースがあるのでしょうか。
樟蔭には3つのコースがあります。具体的には、「国際教養コース(選抜特進コースから改編)」、「総合進学コース」、「身体表現コース」の3つです。

「国際教養コース」では、外部の大学を受験することを視野に入れたカリキュラムを提供しています。もともとは「選抜特進コース」というコースだったのですが、近年の国際化の影響を鑑み、英語の時間を多く取るなど、より時流に合わせたカリキュラムへと変更しました。


「総合進学コース」では、基本的にはそのまま大阪樟蔭女子大学へと進学する生徒が多くなっています。「樟蔭」という学校が好きな生徒さんに来ていただくコースだと言えるでしょう。

最後に「身体表現コース」では、「身体を使った活動を本気でやりたい!」という生徒を迎えています。バトントワリング部、ポンポンチア部、ダンス部、新体操部……などの部活動があり、とくにバトントワリング部に関しては、日本代表としてクロアチアで行われた世界大会に出場し、世界2位という成績を収め、国内で行われる「ジャパンカップ」でも、出場した5種目すべてで1位を獲得する「完全優勝」を成し遂げました。文武両道を目指しながら、本気で自分の才能を高めていけるコースだと考えています。


「大学入試改革」を見据えた英語教育

―海外の学校と姉妹校提携をなさっていると聞いています。
樟蔭では、台湾の学校と姉妹校提携を行なっています。研修旅行(5日間)や交換留学(1ヶ月間)の制度があるほか、ニュージーランドへの語学研修(2週間)も準備しています(いずれも希望制)。さらに来年はハワイの女子高とも連携した交流が始まります。

2020年には大学入試が変わると言われています。英語に関しても、読み・書きだけの能力ではなく、話す・聞く能力も含めた「表現力」が求められます。
時代に対応するため、樟蔭でも「考えて話す力」を養うトレーニングを準備しています。英語で論文を読んで日本語で説明する、プレゼンテーションを行うなど、より時代に合った英語力の育成を目的としています。


活気あるクラブ活動

―クラブ活動については、どのような形で行われていますか。
「友達と大人数で何かを行う」体験は、中学・高校ならではだと思います。樟蔭では、クラブ活動も活発です。
勉強一辺倒の方針に転換した時代には、部員数がゼロになってしまうクラブも残念ながら出てきました。しかし現在では、35あるクラブすべてに部員がおり、活気を取り戻しています。
クラブ活動や行事を全力で楽しむことは、勉強にも好影響を与えます。樟蔭ではクラブ活動も積極的に応援しています。
バトン部

「樟蔭が好き!」という生徒に門戸を開く「チャレンジ入試」

―最近スタートした「チャレンジ入試」とは、どのような方式なのでしょうか。
樟蔭では、一昨年から「チャレンジ入試」という形式をスタートさせました。これは、一般的な学力検査ではなくプレテスト(国算)受験を条件として、入試当日は「作文+面接」で入学を許可する方式で、心から「樟蔭に行きたい!」と思ってくれる生徒に入ってもらおう、という思いからスタートしたものです。

入学後の生徒を見ていると、通常の入試とは違った試験で入学したからといって、能力が低いわけではまったくありません。それどころか、樟蔭という学校全体にとって著しくプラスの影響を与えてくれる生徒が入学してきてくれたことを確信しています。通常の入試と合わせ、あらゆる面から「樟蔭」という学校を愛してくれる生徒の入学を歓迎しています。

―どうもありがとうございました。

取材日:2017年8月22日
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