【中学受験】有名中学現役教諭の ”理科” 特別授業 ~それは何年前のもの? 科学の力で過去を探ろう ー「炭素14」が教えてくれる秘密ー 〜
有名中の授業は、好奇心をくすぐる仕掛けが盛りだくさん。そして、学ぶことの本質を突いた授業は、探求心あふれる生徒を育てます。さあ、あなたも知的な冒険に出かけましょう!
それは何年前のもの? 科学の力で過去を探ろう~「炭素14」が教えてくれる秘密~
執筆:北嶺中・高等学校 理科教諭 小林 恒気
小学生のみなさん、こんにちは。みなさんは恐竜が好きですか?
私は小学生のころ、映画『ジュラシック・パーク』を見てから、しばらく恐竜に夢中になっていました。親にお願いして恐竜図鑑を買ってもらい、ティラノサウルスやトリケラトプスのページを何度も読んでいたことを覚えています。ある日、博物館でアンモナイトの化石を見たとき、ふとこんな疑問をもちました。
「この化石が何万年も前、何億年も前のものだと、どうしてわかるのだろう?」
化石には、「約○○年前のもの」と説明が書かれていることがあります。しかし、化石そのものに日付が書いてあるわけではありません。では、科学者たちはどのようにして化石や昔の生き物の年代を調べているのでしょうか。
今回は、その秘密について紹介したいと思います。
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年代を調べるカギは「炭素」
化石や昔の生き物の年代を調べる方法の一つに、「放射性炭素年代測定」というものがあります。少し難しい名前ですが、簡単に言うと、「生き物の体に含まれる特別な炭素の量を調べて、その生き物がいつごろ死んだのかを推定する方法」です。一口に炭素と言っても、いくつか種類があります。原子の中心には「原子核」があり、その中には「陽子」と「中性子」という粒が入っています。炭素の場合、陽子の数は必ず6個です。陽子の数が6個だから炭素なのです。しかし、中性子の数は少し違うことがあります。
陽子6個、中性子6個 → 炭素12
陽子6個、中性子7個 → 炭素13
陽子6個、中性子8個 → 炭素14
これらはすべて炭素ですが、性質が少しだけ違います。
この中で、年代測定によく使われるのが「炭素14」です。炭素12や炭素13は非常に安定していますが、炭素14は少し不安定で、そのままの姿で永遠に存在するのではなく、「長い時間をかけて少しずつ別の原子へ変化していく」原子です。このような性質をもつ原子を「放射性同位体」と呼びます。
炭素14は長い時間をかけて少しずつ減っていく放射性同位体ですが、地球に降り注ぐ宇宙線によって少しずつ新たに作られています。そのため、自然界には常にほぼ一定の割合で存在しています。自然界における炭素14は、通常の炭素12に比べて約1兆分の1しかありません。これは、いろいろな炭素を1兆個集めたときに、その中に炭素14が1個あるくらいの割合です。
しかし、このわずかな量の炭素14が年代を調べるうえでとても大きな役割を果たしているのです。
決め手は炭素の「半減期」
生き物の体の中の物質は常に入れ替わっています。私たちは毎日食事をし、呼吸をしています。昨日食べたご飯や魚に含まれていた炭素は、やがて私たちの体の一部になります。炭素14もほかの炭素と同じように食べ物や空気を通して体の中に入り、体をつくる材料として利用されます。つまり、生きている間も体の中の炭素14は少しずつ減っていますが、その一方で新しい炭素14が常に補給されています。そのため、生き物が生きている間は、体の中の炭素14の割合はほぼ一定に保たれているのです。
ところが、生き物が死んでしまうと呼吸も食事もできなくなり、新しい炭素を体に取り込めなくなります。すると、それまで続いていた炭素14の補給が完全に止まります。
その結果、生きている間は目立たなかった炭素14の減少が、そのまま記録として残るようになります。そして現在どれくらい炭素14が残っているかを測定することで、「その生き物がいつごろ死んだのか」を推定することができるのです。
炭素14には「半減期」という特徴があります。半減期とは、量が半分になるまでにかかる時間のことです。炭素14の半減期は約5700年です。つまり・・・
死んでから約5700年後 → 炭素14は半分
約11400年後 → 4分の1
約17100年後 → 8分の1
・・・というように規則正しく減っていきます。
たとえば死んだ直後に炭素14が100個あったとすると、約5700年後には50個、さらに5700年後には25個程度になります。このような規則性を利用して年代を調べているのです。
元素の変化は「自然の時計」
このように原子の半減期を利用して年代を測定するための元素はほかにも存在していて、恐竜の年代を測定するのにも用いられています。恐竜が絶滅したのは約6600万年前です。炭素14は5700年ごとに半分になっていくため、6600万年もたつとほとんど残っていません。その場合は、化石そのものではなく、化石が見つかった地層や火山灰、岩石を調べます。岩石の中には、炭素14よりもさらに半減期の長い元素が含まれています。たとえばカリウムやウランなどの元素です。これらも炭素14と同じように時間とともに変化するため、その変化の割合を調べれば何千万年、何億年という長い時間を測ることができます。
つまり科学者たちは、数千年~数万年前なら炭素14、数千万年~数億年前なら岩石中の別の元素というように、目的に応じてさまざまな「自然の時計」を使い分けているのです。
私たちは過去を直接見ることはできません。しかし、炭素14や岩石の中の元素は、何万年、何億年という時間を静かに刻み続けています。科学者たちはその「自然の時計」を読み解くことで、遠い昔の地球の姿を知ろうとしているのです。
博物館で見る化石は、ただの石ではありません。そこには、昔生きていた生物たちの記録が残されています。そして科学者たちは、炭素14や岩石に含まれる元素を使って、その記録を読み解いています。
皆さんも博物館に行く機会があったら・・・
「この化石は何年前のものだろう?」
「どうやってその年代を調べたのだろう?」
「そのころの地球はどんな姿だったのだろう?」
・・・と考えてみてください。きっと、ただの石ころには見えなくなるはずです。 株式会社浜学園




















