１. AIと生成AI：それぞれの役割

　まず、AIと生成AI、それぞれの意味を確認しましょう。

AI (Artificial Intelligence / 人工知能)：コンピューターが人間のように「考える」ことを目指す技術全般を指します。
例：インターネットでの検索、外国語の翻訳、顔認証など。
生成AI (Generative AI)：AIの中でも特に、新しいものや独自のコンテンツを作り出す能力を持つ技術を指します。
例：新たな絵、物語や文章を生み出すAI、オリジナルの音楽を作曲するAIなど。

２. AIの世界の捉え方：AIは世界を「数字」として捉える

　私たちは、物体の色や形、言葉といった情報を、目や耳といった感覚器官を通して、脳が感じ取り、理解（情報の処理）をします。しかし、コンピューターであるAIは、そうではありません。すべての情報が変換された「数字」で情報の処理をしています。

それは、以前よく使われていた「フィルムカメラ」と「デジタルカメラ」でそれぞれ撮影された写真画像の違いに例えることができます。

フィルムカメラは、フィルムに光を当て、光が当たった部分に化学変化を起こすことで、画像の情報（色や形）を記録します。そして、フィルムを化学的に処理（現像）し、光をそのフィルムに通すことで、画像を得ることができます。

一方、デジタルカメラは、イメージセンサーという半導体の一つ一つの素子にあたった光について、どのような色で、どれくらいの明るさを持つかをデジタル電気信号（数字）にし、その膨大な数字データを記憶します。そして、その数字データを用いて、プリンターやプロジェクターに出力をすることで、画像を得ることができます。

AIは、このように数値化されたデータを用いることで、私たちが気づきにくいような複雑なパターンや規則性を読み取っています。

３. 生成AIの内部で行われること

　生成AIが、新たな絵や文章、音楽などを創造する際、その内部では大量の計算が素早く行われています。

例えば、生成AIが「パンダの絵」を描くまでの経過をみてみます。
まず、AIはインターネット上にあるたくさんのパンダの絵を「数字に変換された情報」として記憶します。このデータは、各点の色の情報や、線の形を示す数字の集まりです。
次に、AIは取り込んだ数字のデータから、パンダが共通して持つ「特徴」を計算によって見つけ出します。
例えば、「丸い顔と、白黒の毛並み（目や耳、肩から腕、足が黒く、他は白い部分）を持つ」といった特徴です。これらの特徴は、図形（幾何）や文字を使った計算（代数）を用いて数字データとなり、データの整理や、それぞれの特徴がどれくらいの割合で現れるかといった統計的な分析が行われます。
そして、微分という数学の考え方を用いて、自分が予測したパンダの特徴と実際のパンダの特徴の違いを、確率的な方法で少しずつ小さくしていきます。

いま述べた「幾何」「代数」「微分」「統計」「確率」という言葉は、中学校・高等学校・大学で学ぶ数学の内容です。

４. AI時代を支える算数の力

　将来、皆さんはいろいろな仕事につくことになりますが、どんな仕事につくにせよ、これからの未来は、仕事とAIは切り離せないものになるでしょう。皆さんが今、算数で学んでいる内容は、将来、AIの仕組みを理解し、利用し、新しいAIの開発をするための、とても重要な「土台」となります。算数・数学は、生成AIが情報を理解し、学習し、そして新しいものを創造するための「言葉」そのものだからです。

北嶺中・高等学校では大学受験に向けて、数学を６年間かけて学びますが、本年度から「AIプログラミングアカデミー」を開始しました。北嶺中学校では１年生からAIの勉強をしています。ぜひ皆さんが入学して一緒に勉強する仲間となってくれることを期待しています。

進学教室浜学園