お子様の将来を考える保護者様へ

浜学園教育情報Tips

トップ > 【中学受験】有名中学現役教諭の”社会”特別授業~お子様ランチから農業の未来を考えよう ~

【中学受験】有名中学現役教諭の”社会”特別授業~お子様ランチから農業の未来を考えよう ~

有名中の授業は、好奇心をくすぐる仕掛けが盛りだくさん。そして、学ぶことの本質を突いた授業は、探求心あふれる生徒を育てます。さあ、あなたも知的な冒険に出かけましょう!

お子様ランチから農業の未来を考えよう

執筆:北嶺中・高等学校 社会科教諭 石田 守克

お子様ランチの起源
 みなさんは家族でレストランに行くと何を食べますか。小学校高学年にもなると、恐らく大人と同じようなものを注文しているのではないでしょうか。ですがもっと小さい時は、「お子様ランチ」を喜んで食べていたことでしょう。そんなお子様ランチですが、日本でいつ誕生したのか、知っているでしょうか。お子様ランチ誕生にはいろいろな説がありますが、現在有力なのは以下の二つの説だと言われています。

もっと読む

①『1930年 三越説』
一つ目は、1930年に三越デパートが日本ではじめてお子様ランチを提供した、というものです。1930年というと昭和5年、翌年には満州事変が勃発し、日中戦争、太平洋戦争へと日本が舵を切っていく、そんな時代でした。前年には世界恐慌もあり、日本中が不景気で暗い気分になっていた中、三越デパートが「子どもには夢のあるご飯を」という願いを込めて「御子様洋食」を提供した、という説です。 

②『1931年 東京上野松坂屋説』
二つ目は、1931年に東京の上野松坂屋が、お花見や上野動物園の帰りの子ども連れでにぎわう時期に『お子様ランチ』というメニューを提供した、という説です。さらに翌1932年には、みなさんも想像ができるような「ライスの上に日の丸の旗が立っていてオマケもついた改良版」が提供されたそうです。

このように、もうすぐ生誕100年を迎えようとしているお子様ランチですが、アメリカやヨーロッパなどの海外にもあるのでしょうか。なんとなくですが、日本独自の文化のような雰囲気もあります。
さて、結論を言うと、海外にもお子様ランチはあることはあります。ですが日本のように「子どもが好きなもの」が「少しずつ」「多種類」にわたって1枚のお皿の上に「可愛らしく」乗っているようなものはありません。まずは見た目で喜んでもらう、という日本の文化が生きているのではないでしょうか。



お子様ランチのメニューから見えること
 一方、別の側面からお子様ランチを見てみましょう。日本が世界に誇るお子様ランチですが、具体的にはどのようなメニューで構成されているのでしょうか。以下のイラストを見てみましょう。
○チキンライス【ごはん、玉ねぎ、ピーマン(15)、にんじん、ウインナー(49)、グリーンピース(6)、ケチャップ】
○ハンバーグ【豚肉・牛肉(42)、玉ねぎ、パン粉(10)、塩(12)、コショウ(0)
○エビフライ【エビ(5)、片栗粉、塩コショウ、小麦粉(13)、卵】
○トマト(39)
○ナポリタン【麺(15)、ピーマン、ウインナー、玉ねぎ、マッシュルーム】
○プリン【牛乳、卵、グラニュー糖(35)、生クリーム、さくらんぼ(40)

とても美味しそうですね。さて、各材料の右のカッコ内に書かれている数字が何か、分かるでしょうか。

答えは、「食料自給率(%)」です。国内で消費している食べ物のうち、どのぐらいの割合が日本国内で生産されているのか、ということを表す指標です。ごはん(米)や卵、牛乳などの自給率は非常に高く、ほぼ海外から購入(=輸入)をしていません。反対に、小麦や肉類、砂糖、豆類などはその多くを輸入に頼っていることが分かります。日本が世界に誇るお子様ランチですが、実はその材料の多くを海外の農家に頼っているということになり、なんとも妙な気分になりますね。ところで、なぜ品目ごとに大きく自給率が異なるのでしょうか。日本で消費されるすべての食材を日本で生産することは難しいのでしょうか。



国によって農業が異なる理由
 その国の農業のあり方を決定する大きな要因は何かと考えると、最も大きい要因は気候条件だと言えます。例えば小麦は収穫期に少しでも雨が続いてしまうと芽が出てしまい、大きく味が落ちて売り物にはならないといわれています。そうなると高温多湿な日本では栽培が難しく、夏に乾燥するヨーロッパ(フランスなど)で生産が盛んになります。また、大豆は一粒あたりの値段が安く、一度に大量に作れないと採算が合わないという現状があります。日本は国土のわりに人口が多く、したがって、耕地の面積は小さいです。ですからアメリカやブラジルなどのように大規模な農場がないと、国際競争に勝てないのです。

このように、それぞれの国にそれぞれの気候条件や社会条件があり、栽培するのが得意な農作物と不得意な農作物があるということです。得意なものを輸出し、不得意なものを輸入することで貿易というものが成り立っているわけですね。



多様な日本の農業
 一方、日本の農業は一般的に、「土地生産性が高い」と言われています。狭い国土の中にある田畑に多くの資本(お金)を投入し、1haあたりの収穫量を少しでも多くしようと努力しているのです。また、日本の中でも、気候条件のほか、歴史的・文化的背景によって多様な農業形態が見られます。少し紹介してみましょう。

米の生産量は北海道が多いですが、北海道と毎年生産量トップを争っているのは新潟県です。日本穀物検定協会によるランキングで25回連続「特A」評価を受けているコシヒカリのブランドで有名な新潟県魚沼市ですが、ここがなぜ日本を代表する米どころとして発展したのかについては、いくつかの理由が挙げられます。一つ目は、魚沼市では栄養を豊富に含んだ水がたくさん得られるということです。二つ目は、夏に高温乾燥するという気候が米の育成に最適だったということです。三つめは、日本海側に位置しているため、「やませ」による冷害の被害を受けにくいということが挙げられます。これらの気候条件をいかして努力を重ねてきた先人たちの苦労があるからこそ、私たちの食卓にはいつもおいしいお米が並ぶのですね。

また、リンゴの生産で有名な青森県ですが、なぜ青森県ではリンゴの栽培が盛んになったのでしょうか。実はこれも気候条件が大きいのです。リンゴの生産には1:少ない降水量、2:大きい気温の日較差(にちかくさ)、3:年平均気温10度前後、の3点が重要な要素だとされています。これらすべてを満たすのが青森県なのです。それ以外にも、鮮度が重要なリンゴを素早く首都圏に輸送できるJR東北本線が開通したこと、「やませ」により稲作が困難であること、などの要因もあります。青森県産のリンゴは全国各地のみならず、海外でも人気があります。とても誇らしいことですね。



食料自給率が低いと……
 とはいえ、先ほどのお子様ランチのように、私たちの食卓には外国産のものが非常に多く並びます。国内産のものに比べて外国産が多い、ということにはどのような問題点があるのでしょうか。

・日本に輸出をする国が収穫不振や政治的な理由で、輸出を制限する場合がある。
・安い外国産の作物には日本の安全基準を満たしていないものが入っている可能性がある。
・日本国内の農家が外国産の安い農作物との価格競争に負けることで、農家の廃業、農村の過疎化が進んでしまう。

 このように考えると、食料自給率が低いということは「私たちの食卓に美味しくて安全なものが並ぶ」という、ある意味当たり前のように考えていることが難しくなってくる可能性があるということです。日本の食料自給率を上げていくために何が必要か、みなさん一人ひとりが真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。

浜学園教育情報Tips

最新の投稿5件

タグクラウド

アクセスランキング

私立中学ここが自慢! 読めばわかる!日本地理 受験の勝負メシ by有名中学 特設学校紹介
ページのトップへ戻る