【中学受験】有名中学現役教諭の”国語”特別授業~「カンペキ」って漢字で書けますか?~

有名中の授業は、好奇心をくすぐる仕掛けが盛りだくさん。そして、学ぶことの本質を突いた授業は、探求心あふれる生徒を育てます。さあ、あなたも知的な冒険に出かけましょう!
「カンペキ」って漢字で書けますか?
執筆:北嶺中学校 国語科教諭 大谷 誓也
「カンペキ」を漢字で書くと……
みなさんは、テストなどを受けていて「今日の出来はカンペキだ!」と思ったことありますよね?日常会話でも、「カンペキ」という言葉はよく耳にします。
さて、その「カンペキ」を漢字で書くことはできますか?挑戦してみましょう!
正解は、、、「完璧」です。よく見てください。「完壁」じゃないですよ。 違いがわからない?じっくり見比べてください。「壁」ではなく、「璧」です。気が付きましたか?へんが、「土」ではなく、「玉」になっています。
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「玉」である理由
実は、この「完璧」という語は、中国の昔話をもとにできた言葉なんです。つまり故事成語というやつですね。みなさんも、きっと「故事成語」について受験勉強の中で学んでいるでしょう。先日、北嶺中学校の三年生では「漢文」の授業で、この「完璧」という語が生まれるもとになったお話を学習しました。ちなみに、生徒に上記の問題を出したところ、始めはほとんどが「完壁」と書いていました。「カンペキ」を故事成語だと知っていた人も多かったですが、そういう生徒でも漢字の書き取りは間違えていましたね。
なぜ間違えてしまうのでしょうか?それは、「璧」(へき)という文字になじみがないからだと思われます。
では、「璧」という漢字はどのような意味を持つのでしょうか。答えを明かすと、「璧」には、「宝玉」の意味があります。
え?と思いませんか。だって、「カンペキ」って、「何も欠点が無い完全」な状態の時に使いますもんね。
それが、宝石と何の関係があるの?と思いますよね。でも、関係があるんです。 由来となった次の話を見てみましょう。
宝玉をめぐる物語
中国にはかつて、いくつかの国が覇権を争っていた戦国時代がありました。趙(ちょう)という国もその一つであり、恵文王(けいぶんおう)という人物が治めていました。恵文王は、「和氏(かし)の璧(へき)」という中華に名を轟かす有名な宝石を持っていたのです。そこに目をつけたのが、当時、絶対的な力を持っていた秦(しん)国の昭王(しょうおう)です。恵文王に、秦の城塞都市と「和氏の璧」を交換するよう要求します。趙王にとっては悩みどころです。要求をのまなければ秦の怒りを買い、趙への侵略の口実を与えることになります。要求をのんだとしても、本当に秦が都市を与えるかは疑わしいところです。戦争になってしまうと大勢の人が亡くなり、困ります。
交渉に臨むべきか、どうしたらよいか議論していると、家臣の藺相如(りんしょうじょ)という賢い人物が「私にお任せください。」と恵文王に進言します。
さて藺相如は宝玉を秦に届けに向かいましたが、着いてみると秦の昭王には交換する意思がなさそうで、ただ宝玉を奪うつもりだと気がつきます。そこで、藺相如は、一度は「和氏の璧」を献上しますが、昭王に「実は宝玉にはキズがあるのでその部分をお教えしたい。」と方便を言って、「璧」を近づけさせたところで素早く奪い返しました。そして自分の部下に宝玉をたくし、無事に「和氏の璧」を趙の国に持ち帰りました。
由来を知り理解を深める大切さ
この話から、「璧」(宝玉)をどこも欠けることなく完全な状態で無事に持ち帰った=「完璧」という言葉が生まれました。このように、日常生活で使われる言葉が故事成語であることはままあります。その由来を知ることで、言葉に対しての理解が深まり語彙力も高まるでしょう。今回は、「完璧」にまつわる話でしたが、ぜひ別の故事成語もその由来まで調べてみてください。
さて、中学入試も近づいていますね。藺相如が「璧」を完全な状態で自国に持ち帰ったように、みなさんも、「完璧」な答案を書いて、志望校の合格を勝ち取ってください!残り期間はわずかかもしれませんが、体調を万全にして、自分の実力を発揮してくれることを陰ながら応援しています。 進学教室浜学園